第55幕
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万事屋から少し歩いた所にある小さい公園。早朝で誰も居ないのを良いことに刀を抜いて銀時と対峙する。
「俺は木刀でいいのか?それともこっちの方がいいか?」
銀時が指さした先は朔夜の腰。
『銀時のやりやすい方でいい』
「木刀よりこっちの方が臨場感出るか?」
朔夜の腰から刀を引き抜いて構える。互いに一呼吸置いてから手合わせを始めた。
キンっと刃がぶつかり合う音。ギリギリと軋む嫌な音が公園に響き渡るのと同時に銀時は苦笑いを浮かべる。
「おいおい……マジかよ。本気でやんの?」
『軽くて合わせ、なんて生ぬるいことすると思ったか?それなら屯所で何度もやってる』
「そりゃそうかもしんねぇけど……ったく、こちとら寝起きなんだぞ?頭がハッキリしてねぇうちからお前の速さに追いつけるわけねぇだろ」
文句を言いつつも銀時はちゃんと海の刀を受け止めている。起き抜けの相手に全力を出しては可哀想だと思って多少は手を抜いているが、攘夷浪士を相手しているときと同じくらいの力は出していた。
『そう言いつつも追いついてるだろ?』
海の剣技に追いついてくる人間なんてそうそう居ない。よく稽古をしている土方でさえ海の剣先が読めなくて音を上げる時があるのだ。
本気を出しても受け止めてくれるのは銀時くらい。
『銀時が適任すぎるんだよ』
「そりゃずっと見てたからな。俺以外にお前のそれに追いつけるやついたら嫉妬すんぞ」
『いないだろ。今までも居なかったんだから』
戦争時代に色んなやつと戦った。でも、天人ですら海を相手に身構えたくらいだ。きっとこれから先銀時くらいしかいない。なんとなくそうであって欲しいと思って。
陽が上がってくるまでの間、銀時と刀を交えていた。互いに息が上がってきた頃ぐらいに公園の外を見ると人影が見えた。
『そろそろ代わるか』
「……なあ、本当にやんの?」
『やる為にここに来てるんだよ。最終日は俺じゃなくて土方が朔夜の相手をする。そこで朔夜が使えるか見極めるんだが……』
隊士たちの前で軽く手合わせをするくらいでは物足りない。隊士たちはみな朔夜が負けると思っている。土方と朔夜の手合わせの賭け事まで行われているのだ。
当人である土方も一週間で朔夜が平隊士並、もしくはそれ以上の剣技を身につけられるとは思っていないのか、適当に終わらせると言う始末。
『土方と賭けをしてんだよ』
「賭け?なんの?」
『朔夜が勝ったら屯所内にある必要最低限以外のマヨネーズの廃棄』
「……マヨネーズってそんなにあるものなの?」
『食堂に気持ち悪いくらい並べてある。人の飯にまで掛けてこようとしてるくらいだからな』
旨み成分が増すとか言ってうどんの上に掛けられた時は流石に蹴り飛ばしたけど。
「うわ、最悪じゃん。あれ、負けた時はどうすんの?」
『そういえば聞いてなかったなそれ』
そもそも賭けを申し込んだのは海の方だ。土方の態度にイラッとしてつい言い出したこと。一方的に取り付けたは良いが、朔夜が負けた時の条件は何も聞いていない。屯所から出すことは絶対条件だからそれは賭けの条件には入らないはず。賭けに頷いていた土方は何を条件にするつもりだったのか。
「変なこと言われてないだろうな」
『変なこと?』
「その……朔夜が負けたら多串くんの言いなりになるとか」
『雑用ぐらいならいつもやってるんだけど』
「そうじゃなくて、なんかもっとほらこう……あるじゃん」
『なんかってなんだよ』
「あー……いや、なんでもない」
曖昧な返事を漏らしながら銀時は朔夜の方へと足を向ける。持っていた刀を朔夜に渡し、そしてごにょごにょと何かを呟いていた。
「朔夜、お前絶対負けるなよ?」
「ま、負けませんよ!」
「負けたらお前の兄貴、副長に良いように使われるからな」
「絶対負けません!!」
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