第54幕
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翌日、朔夜に今の状態を包み隠さず話した。両親は犯罪者として捕まっていること、そして帰る家が無くなった事を。最初は泣きそうな顔をしていたが、淡々と話す海を見て泣いている暇はないと察したのか泣くのを我慢して最後まで聞いていた。
『今日から稽古をつける』
そう言って屯所の道場を借りて朔夜に稽古をつけ始めた。
そして二日目の今日。
朝食を食べて、いつもの見回りを済ませてから朔夜を探したのだが姿が見えない。総悟に朔夜がどこに行ったかと聞いてみたところ、海が戻ってくる前にそそくさと出かけて行ったというではないか。
『あの野郎……逃げやがったな……』
一日だって無駄には出来ないというのに何を考えているのか。朔夜には一週間で平隊士並になるまで稽古を付けると伝えてある。その間、どんなに辛くても逃げ出すことは許さないとも。
隊士にならないのであれば、あいつは屯所から追い出される形になる。近藤のことだから住むところが見つかるまでは置いといてくれるかもしれない。
でも、それは近藤だけの意見。他の隊士達からしたら邪魔者にしかならないのだ。まだ海の弟だからという牽制がかかってるからいいものの、それでもチラホラと聞こえてくる負の言葉。
西ノ宮という家名を背負ってしまっているというオプション付き。父親だから関係ないとはいえ、親子共々印象が悪くなるような事件を父親が起こしてしまっているのだ。世間的に冷たく見られるのは仕方ない。
だからこそ本人の実力で周りを黙らせる必要がある。父親があんなでも自分は違うということを。カエルの子はカエルだとしても、進む道は必ずしも同じではないということを周りに知ってもらうために。
『……親の心子知らずってやつか。厄介だな』
屯所の門に腕を組んで寄りかかる。帰ってくるかはわからないが一応待ってみるかとここにずっと立ち続けて二時間。帰ってくる気配は未だにない。
むしろこのまま追い出されて、世の中の厳しさを知れば成長するのではないだろうか。自力で生きていく術を身につけていった方が朔夜の為になるのでは?
『……たかが、生まれて十年余りのやつにそんなこと出来るわけねぇか』
はぁ、とため息をついて青い空を見上げる。子供の世話は難しい。銀髪の彼は確かそう言っていた気がする。その言葉が今身をもって知ることになるとは。
『早く帰ってこいよクソガキ。じゃねぇとお前を路頭に迷わせなくちゃいけないんだよ』
少し悩んでから海は屯所から離れた。朔夜が居るであろう場所は検討がついている。ここら辺に逃げ込む先と言ったら一箇所しかない。
またあそこの人間に迷惑をかけていると思ったら気分が重くなる。きっと彼は気にせず笑ってくれるだろうけど。そんな甘えが自分は許せない。
『自分のことくらい何とかしろよってな。銀に甘えてばかりじゃ……』
弱くなってしまう。
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