第50幕
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風呂から上がり、濡れた髪を乱暴にタオルで拭きながら居間へと戻る。ふわりと香るいい匂い。その匂いで忘れていた空腹が呼び起こされて、ぐぅと情けない音が腹部から鳴った。
『上がったか。って、お前ちゃんと髪拭けよ』
「んー。拭いてる拭いてる」
『拭けてねぇよ。廊下びしょびしょじゃねぇか』
「それより腹減った……」
『だーっ!濡れたまんまでうろうろすんな!ここ座れ!!』
ぐいっと海に腕を引かれてソファへと座る。テーブルの上にはほかほかのご飯と味噌汁、焼き魚とおひたしが添えられている。それらをじーっと見つめていると、背後からため息が聞こえた。
『先食ってていいから』
「海は?一緒に食わねぇの?」
『お前の頭が先』
そう言って銀時の頭に乗っているタオルが動く。大人しく座っていると、海の手が止まった。どうした?と声をかけて振り返ると、あちらも首を傾げて銀時を見ていた。
『なんか食えないものでもあったか?ここの冷蔵庫になんもなかったから急いで近くのスーパー行って買いに行ったんだけど……それくらいしかなかったんだよ』
「いや、食えない物はないけど。海がまだ食わないなら待ってる」
『は?冷めるぞ。俺と違って銀時は猫舌じゃねぇだろ』
「海だって腹減ってんのに俺だけ先食うなんてことできるかよ。終わるまで待ってる」
『……勝手にしろ』
ちょっと嬉しそうな声色。ぐいっと顔を前に向けられて表情までは見えなかったが、きっと笑ってるんだろうなぁなんて思いつつ、海が頭から手を離すまで待ち続けた。
『ほら、終わった。もう食べていいぞ』
「ん、悪いな作らせちまって」
『泊まらせてもらってんのは俺の方。だからこんくらいはやんねぇと』
「明日は俺が作るから。何食べたい?」
『作れんのか?あんな生クリームしか入ってねぇような冷蔵庫の中身で』
「……買い出しに行きます」
『はぁ……なら一緒についてく。その時までには考えとく』
「おう。あ、うちんとこのお嬢さんはお前以上に食うから。気をつけろよ」
『ああ、なんかこの間そんなようなこと言ってたな』
「おう。五合炊きの炊飯器全部食うようなやつだからな」
『なら、炊飯器の中身は神楽の分として、俺たちの分は鍋で作るか』
「え、そこ驚かないの?なんで普通の対応なの!?」
『成長期ならそんくらい食うだろ』
「そんな食ってたら世の中のお母さん赤字必須だろうが!!子供二人いる家庭とか火の車になるわ!!!大体、子供二人の世話がどんだけ難しいか分かるか!?一人はオタクだしもう一人は大食らいの反抗期なんだからな!?」
『頑張れ、お父さん』
「俺はお父さんじゃねぇ!!!ならお前も手伝えお母さん!!!」
『別にいいけど』
「はぁぁああぁああ!?」
『神楽と新八の面倒くらいならみてやっても構わない。お前は別な』
「え、なんで俺だけ別なの?え?なんで?」
前でもぐもぐ口を動かしている海になんでなんで?と問うと、海は口の中のものを飲み込んでからさも当たり前のように言った。
『お前は最初から入ってる。二人は考えてやっても構わない、ってだけだ。あいつらだって年齢こそ子供だけどそれ以上に中身がしっかりしてる。下手に手を出して変な風に曲がっちまうよりかは、多少放任しといて、やっちゃいけないことをやっちまった時に叱ってやればいい』
「お、お父さん……」
喋り終えた海が焼き魚を突く。そんな海を見て銀時は尊敬の眼差しで呟いた。
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