第49幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
飛び散る血と天人の死体。そしてその中でひたすら刀を振るう二人の侍。
その姿は攘夷時代を思い出させる光景だった。
あの中に自分も混じっていたんだなと思うと笑みが零れる。あぁやって仲間に背中を守ってもらって、たまに文句言ったりして喧嘩して。それでも目の前の敵はちゃんと倒す。互いに危なかったら助けたりもした。
そんな懐かしい思い出が目の前で繰り広げられている。
「海!大丈夫だったか!?」
『桂……お前まで来てたのか』
桂の声が聞こえ、そちらへと首を動かす。刀身を鞘に戻して海の元へと駆け寄ってきていた。
「心配したんだぞ?銀時からお前が天人共に連れていかれたと聞かされた時は身が裂けるかと思ったではないか」
『悪いな、迷惑かけて』
「迷惑ではない。それよりも……」
桂は目の前で戦っている銀時と晋助を見やる。きっと桂もあの頃を思い出してるんだろうな。二人を見つめる目が少し柔らかい。
そんな雰囲気をぶち壊すように天人の汚い声が響く。
「てめぇら……覚悟は出来てんだろうなぁ!?」
「それはこちらのセリフだ。貴様ら、我が友人に手を出したことを後悔するがいい」
『桂!』
「心配するな。俺とてこれくらいはやれる」
余裕な面持ちで桂は刀を手にし、襲いかかってくる天人たちを薙ぎ払っていく。船内からぞろぞろと現れた天人たちは一人残らず桂の刀の錆となった。
『まだまだ現役だな』
「当たり前だろう。そうでなくては攘夷志士などやっていけぬわ」
『そりゃすみませんでした。なぁ、桂』
「なんだ」
『ちょっと紐貸してくれないか?』
「紐?そんなもの何に使うんだ」
『晋助に羽織り借りたけど、帯がないから前を閉じれねぇんだわ。ちょっとこのままじゃ動きづらくてな』
羽織を掴む手を離せば前がばさりと開いてしまう。桂たちが守ってくれるとはいえ、丸腰の状態でいるのは気が引ける。だから紐はないかと聞いたのだが、桂はギョッとした顔で固まっていた。
「お、お前、服はどうした!」
『脱がされた。着替えようとしたけど晋助が早くここ出るって引っ張るからそのまま出てきた。部屋に戻ればあるんだろうけど……あそこには正直戻りたくねぇし』
散々、辱めを受けた部屋に戻るなんてまっぴらごめんである。あそこに戻るくらいならこれで我慢するしかない。
とはいえ、そんな丁度よく着物を縛れるような紐なんて持ち合わせていないだろう。そう思ったが、海の予想を裏切るように桂は紐を懐から出した。
「これでいいか?」
『十分。てか、よく紐なんて持ってたな』
「何かあった時にと思ってな」
『……ドラ○もん』
「違う、カツえもんだ」
『いや、それ色々とバレるから。伏字の意味ねぇから』
「戯言はいい。早く前を閉じないか。天人共が来ているぞ」
『ノッて来たのは桂の方じゃねぇか』
ジト目で桂を見ながら腰に紐を巻く。
とりあえずはこれで羽織りから手が離せる。あとは……。
「お、おい!どこにいく!」
『多分持ってるはずなんだよ。あいつ』
見やるは晋助の腰。そこには中身が入っていない鞘と、抜かれずに大人しくしている刀。
天人と対峙している晋助へとゆっくりと近づいていく。銀時と晋助は天人と戦うのに集中していて海には一切気づいていない。
その隙をついて晋助の腰にある刀へと手を伸ばした。
.