第19幕
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急いで自室へと戻る途中、ばったりと山崎と出会してしまい思わず舌打ちが漏れた。幸い、舌打ちは山崎に聞こえることは無かったらしく、海を見つけた山崎はにこやかな笑みを浮かべていた。
山崎だけならまだしも、その山崎の後ろには見知らぬ者が立っていた。。顔に包帯を巻いた長身の男と、真っ黒の丸メガネをかけた少女。そして罰ゲームかなんかで使われそうなメガネと鼻を付けた男。
こちらは早く部屋に戻りたいというのに。
「あ、海さん!お疲れ様です!」
『あぁ、お疲れさん。なんだそいつらは』
「近藤局長に頼まれて連れてきた拝み屋さんですよ。みんな幽霊にやられてしまったので、祓ってもらうんです」
『拝み屋?そんなの呼んでんのかよ』
「でも、みんな赤い服の女がって言って寝込んでるんです……」
『昨日、夜な夜な怪談話をやってただろ』
「は、はい……」
『その時に赤い服の女が出てくるような話をしたか?』
「ええ、しましたね」
『それだ。聞いたヤツらが集団心理でそうなったんだろ。何かと見間違えたんじゃないか?誰かが見たという話が出れば、自分も見てしまうかもしれないという強迫観念。見たという声が増えれば尚更。よくあるだろ。昼間に見る分にはいたって普通の木の木目が、夜中に見ると人の目に見えるとか。そういうのと一緒じゃないか?』
シミュラクラ現象。人は同じところに三つ点があるのを見ると顔に見えると連想してしまう。それが隊士たちに起きてるんじゃないか。
そう吐き捨てた海に山崎は戸惑いながらも、そうなのかもしれないと考え込み始めた。
「そういうものなんですかね?」
『そういうもんだろ。悪いけど、やること残ってるから俺はもう行くぞ』
「へ?あ、はい!」
これでやっと部屋に戻れる。山崎たちの横を通り抜けようと海が一歩踏み出した。
「君、取り憑かれてるね」
『は?』
胡散臭い包帯男の真横を通った時、がしりと腕を掴まれた。掴まれた腕を引っ張って男から離れようとしたが、力強く掴まれた手はそう易々と離れなかった。
「これはかなり酷いね。今すぐ祓わないと大変なことになるよ」
『……本気で言ってんのか?』
近藤が呼んだのだから客人扱いとなるのだろうが、もうそんなことを気にしている暇はない。男の言葉に海は目を細めた。
『この手を離せ。俺はお前らに構ってる暇はない』
相手を睨みながら殺気を漂わせる。これくらいやればこの男も手を離すだろうと。青ざめた顔をする山崎が視界の隅に入ったが、気にすることなく男を睨み続けた。
「大変!憑き物が怒ってる!」
『は!?おい!下ろせ!!!』
「ええええ!?海さん!?」
「今すぐ祓わないと!君の部屋どこ!」
男がクワっと目を開いたかと思えば、海を軽々と抱き上げて肩に担いだ。ぐらりとブレる視界。降ろせと暴れる海の足を封じるように男は腕で抱え、突然のことに驚いている山崎に「この子の部屋はどこ!?」と問い詰めていた。
「え、えと、向こうの方です!」
『山崎ィ!!!』
「あっ、すみません!!」
部外者に部屋の場所を教えるな!と叱りつければ、山崎はさーっと血の気の引いた顔で俯いた。
そのまま海の部屋へと走り出す男。海は男の背中を殴りつけていたが、降ろされることはなかった。
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