第18幕
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「ったく……あんなことされたら焦るでしょうが」
『元はと言えばお前がそんなこと言わなければ……』
「あ"?なんか言ったか??」
『なんでもない』
海が最初にいた場所まで銀時と共に戻り、また小言を聞かされる。今度は言い返したのだが、銀時から発せられた威圧に顔を背けた。
その間にも新八は楽しそうに泳いでいて、海はその姿を羨ましそうに見つめた。
やはり自分は泳げないかもしれない。先程初めて溺れた感覚がまだ残っている。また海の中に入って溺れたらどうすればいいのか。さっきは銀時がいたから助かったが、もし誰もいなかったら。誰も見ていなかったら。
「海」
海を見て嫌な想像ばかり膨らませる海の手を銀時が掴む。
「俺が泳ぎ方教えてやっから。ンな顔すんなよ」
『泳ぎ方?』
「そ。今まで泳いだことねぇやつがいきなり泳げるわけないだろうが。俺がバカにしちまったからアレだったけどよ、その、ちゃんと次は教えるから」
"だからそんな寂しそうな顔しないの"
そう言って微笑む銀時に海は自分の顔を手でペタリと触れる。そんな寂しそうにしていたのか。自分では全く気づかなかった。
「ほら、おいで」
今度は手を引かれてゆっくりと海へと入っていく。恐怖で強ばる身体。握られている手に力を込めれば、それ以上に銀時が手を握ってくれる。
「安心しろ。絶対離さねぇから」
『離したらぶっ殺す……!』
「離さねぇからその殺気やめてくんない!?銀さん海の中でチビっちゃうから!泳ぎながら小便漏らすとかガキかよ!」
銀時が騒いでいるのが聞こえるが、海はそれどころでは無い。
「海、ちょっと力みすぎ。ほら、肩の力抜いて」
『む、無理だろこんなん!』
「大丈夫大丈夫。あー……まずはバタ足の練習からか」
バタ足わかる?と聞いてくる銀時に海は力強く首を横に振る。そりゃそうかとケラケラ笑う銀時。
手を繋いだまま、銀時がゆっくりと後ろへと倒れていく。それに合わせて、海も前へと身体が引っ張られて足が地から離れた。
『は……!?待った、銀時!待った!!!』
「掴んでてやるから足浮かせてみろよ」
『そんなこと出来るわけッ……!』
「足をバタバタさせるの。海なら出来るから大丈夫。やってみ?」
すーっと背泳ぎしながら海を引っ張る。足が地面から離れてしまっている以上、銀時に縋るしかない状態。銀時に言われた通りに足をバタバタと動かせば、上手い上手いと褒められた。
「やればできるじゃねぇか。よし、そのままキープな?」
『は!?』
それから暫くバタ足の練習をさせられた海は疲労でピクリとも動かなくなった。
『疲れた……』
「お疲れさん。でも、楽しかったろ?」
銀時に抱えられるようにして海に浮かぶ。あぁ、人って浮くもんなんだ。
『楽しかったっちゃ楽しかったけど』
「最後なんか俺の手を掴まなくても泳げるようになったじゃねぇか」
『それはお前が勝手に手を離したからだろうが!!』
バタ足の練習中、途中で銀時が海の手を離した時があった。足を動かすのに必死だった海は手が離れていた事に気づかず一人泳いだ。
手が離れていることに気づいた時、すぐに溺れたが。
「でも、泳げるようになってよかったんじゃねぇの?出来ないことが出来るようになったんだからよ」
『そ、れは』
「怖かった?」
『え?』
「泳ぐの、怖かった?」
怖くなかったといえば嘘になる。泳ぎ方を教えてもらうよりも先に海の怖さを覚えてしまったのだ。そりゃ身がすくんでしまって簡単には泳げなかった。
でも、その度に銀時が力強く手を握ってくれたから。絶対この手は離さないと言ってくれたから。
『怖く……なかった』
「そっか」
海の言葉に嬉しそうに笑う銀時。
「海、また海来ような」
その言葉に海は小さく頷いた。
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