第18幕
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「海くんよく似合わってるわ。その色にして良かった」
水着に着替えて更衣室から出ると、お妙がにこやかな笑みを浮かべながら出迎えてくれた。
下から上まで舐めるような視線を向けてくるお妙に違和感を感じる。
『どうした?』
「うん?あら、ごめんなさい。あまりにも似合ってたから見とれちゃった」
ふふふ、と笑うお妙。水着一つで何が変わるというのか。まぁ、お妙が楽しんでいるのであれば、深く聞くのも野暮というもの。
『お妙さんは泳がないのか?』
「私はいいの。ほら、海くんは銀さんと遊んでらっしゃい」
荷物は預かっておくから、と海の手に抱えられていた着物を奪い取るようにしてお妙は受け取り、海の背中を押して海の家から出された。
「大丈夫。しっかり銀さんと海くんが戯れてるところは撮っておくから」
お妙が何か呟いていた気がしたが、それは海の耳に届かなかった。
『暑い……』
照りつける太陽が砂浜を焦がす。裸足で歩くには苦痛過ぎた。
急ぎ足で海へと向かい、熱くなった素足を冷やす。ひんやりとした海水が足に当たって気持ちがいい。もう少し浸かってみようかと、膝下ら辺まで海の中へと進んだところで足を止める。
『これ以上は無理だな』
ここから先へと進んだらなんだか帰れない気がする。海に入るのは初めての経験。泳ぐことも溺れたこともない海にとって、どこまでが安全なのかがわからない。
こんな未知の領域で無理をするものではない。もう少し進んでみたいと思う好奇心を抑えて、海はその場にしゃがんで、パシャパシャと水を跳ねさせた。
「海さーん!!一緒に泳ぎましょうよ!」
浅瀬で遊ぶ海に気づいた新八が、海に向けて手を振る。なんだ、仕事と言っておきながら結局は遊んでいるじゃないか。
ゴーグルを付けて泳いでいる新八のすぐ近くには浮き輪に乗ってぷかぷか浮いている銀時の姿もあった。
『あー……俺はここでいいわ』
誘ってくれるのは嬉しいが、そんな遠いところまではいけない。よく新八はそんなところまで行けるなぁ。なんて苦笑いを向けた。
「海くんはカナヅチだからねぇ。泳げない子ですもんねぇ」
そんな海をバカにするように笑う銀時。
気持ちよさそうに海の上に浮かぶ銀時にイラッとしながら海は立ち上がる。銀時が泳げるのであれば自分だって泳げるのではないか?言われっぱなしでは癪に障る。
「え?海?ちょ、おまっ」
ざぶざぶと水の中へと身体を沈めていく海に銀時が焦燥の色を見せる。
『やってみなきゃわかんねぇだろうが!』
「いや、いきなりは無理だから!やめときなさいって!!」
胸元まで浸かった頃辺りで一気に恐怖が脳内を支配する。これはまずいかもしれない。そう思った時には時すでに遅く、足が地面から離れた。
「海!?」
全身が海の中へと沈んでいく感覚。目を開けているのに前がちゃんと見えない。あぁ、水の中での視界はこんな感じなのかとやけに冷静だった。
早く砂浜に戻らないと、息が出来ずに徐々に苦しくなってくる胸を押さえながら戻ろうと藻掻いたが、中々顔を海面に出すことが出来ずにいた。
『(まずい……これは……!』
溺れている。その事実に気づいてしまえばもうまともな考えなど出来るわけもない。
ゴボッと自分の口から空気が抜けて泡となって上がっていく。死という単語が頭をよぎった瞬間、海は勢いよく海面へと顔を出した。
『げほっ……っあ……ごほっ!』
「お前バカなの!?」
咳き込みながら必死に酸素を取り込む海を怒鳴りつける銀時。苦しさで涙目になった目で銀時を見れば、海を睨みながらも安堵した表情をしていた。
「なんで泳げもしないのに入ってきたんだよ!バカッ」
『銀……が、ばかにするから』
「だからって真に受けなくなっていいだろうが!!いつもみたくなんで流さねぇんだよ!!」
言い出しっぺはお前なのになんでそんなキレてんだよ。なんて言ったら彼は益々怒るだろう。
言い返さずに黙り込んだ海に銀時は再度、バカ!と怒ってから、海を連れて砂浜へと戻った。
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