第18幕
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「何度も言わせんなよこの野郎!俺たちゃ仕事しに行くんだよ!」
『ん?俺は仕事とは聞いてないぞ?』
銀時の言葉で神楽の頭を撫でている手が止まる。確かに"仕事"と聞こえた。遊びに行くのではないのか?と銀時に問いかけようとしたが、銀時はお妙に気圧されて沈んでいた。
「そういえば海くん」
『なんですか?』
「海くんは水着持ってきてるの?」
『いや、その身一つで来いって言われたから何も持ってないな』
そう言えばそうだった。海に行くのに水着も持っていない。屯所を出たままの着物の格好で海に行くなんておかしな話である。
「(やだ、その身一つでなんて……まるで駆け落ちみたいじゃない!)なら、あそこのお店で水着買っちゃいましょうよ!」
「姉御の言う通りネ!海、海行くのに水着無いと泳げないヨ!」
『そりゃそうなんだけどよ……でも、俺、泳げないから。水着持っててもあんま意味ねぇかも』
昔から水場に近づいたことがない海は生まれてこの方、泳いだ経験が一度もない。きっと海に行ったとしても浅瀬で涼むくらいで、泳ぐことはしないだろう。だから水着は必要ないかもしれない、とお妙に言ったのだが、新八と神楽が何故か盛り上がってしまって、海の声は掻き消された。
「さぁ、買いに行きましょ?」
お妙に腕を引かれて店へと歩き出す。助けを求めるように銀時の方へと振り向いたが、落ち込んだまま俯いている銀時は海たちの会話を聞いてすらいなかった。
「海くんはどの色が合うかしらねぇ」
「青いのとかはどうですかね?」
「あら、今だって紺色の着物なのに。水着も青にしちゃうの?」
「海は何色がいいアルカ?」
『いや、だから水着は必要ないって……』
「女に恥かかせんじゃねぇよ」
提案してやったんだ。大人しくついてこい。
そう語るお妙の瞳に海はさーっと血の気が引いた。あぁ、この人は敵に回してはいけない分類の人だと認識した海は何度も首を縦に振って、水着を買う事にした。
店に入るとひんやりとした空気が海たちを包む。クーラーがよく効いた店内はとても涼しく、いつまでもここに居たいと思ってしまうほどだった。
お妙と新八と神楽が海の水着を選ぶために散っていく。ぽつりとその場に一人残った海。そんな海に話しかけようとする店員。
「お客様、本日は何をお探しですか?」
マニュアル通りの営業トーク。にこやかな笑みを浮かべる女性店員に海は苦笑した。
探しに来たというか店に連れ込まれたというか。自分には買う意思がないから商品を勧められても困る。さて、彼女にどう返そうかと悩みながら口を開いた時、後ろから誰かに抱き込まれた。
「突然居なくなったらびっくりすんだろうが」
海の腹部へと回る腕。そして肩に乗る銀時の顎。不機嫌そうな声色。
店員は銀時と海を交互に見た後、引き攣った笑みを浮かべ、海たちの前からそそくさと去っていった。
『お妙さんに引っ張られて来ちゃったんだよ。断るに断れなくて』
「なに?アイツら水着買うの?だからさっきから言ってんでしょうが。遊びに行くわけじゃねぇって」
『俺は遊びに行くとしか聞いてない』
「海は遊んでていーの。むしろ遊んでろよ。いつも仕事してんだから。たまにはゆっくりしろって」
『仕事するのは当たり前だろ。お前が仕事し無さすぎなんだよ』
いつも見かけるのは暇そうにかぶき町を歩く姿。依頼があったりなかったりと不定期なのは仕方ないが、あまりにも仕事をしなさすぎる。仕事が無いなら無いなりのやり方というものがあるだろう。
そんなことを銀時に言えば、「やだやだ、これだから社畜は」とため息をつかれた。
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