第16幕
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尚も海へと手を伸ばそうとしてくる晋助。その手を叩き落とそうとしたが、カクッと突然力が抜けた。
「てめぇもあいつも弱くなりやがったな。こんな生ぬるいところでのうのうと暮らしてるせいか」
『弱くて悪かったな!こちとらこの間まで動くのもやっとな怪我してたんだよ!』
腕がダメならばと足で晋助を蹴り飛ばそうとするが、振り上げた足を逆に掴まれてしまいバランスを崩す。
「……治ったのか」
『は?あぁ、なんとか……』
怪しげな笑みを浮かべていた顔から表情が一瞬にして消える。無表情の晋助にび海は、びくりと肩を揺らした。
「誰にやられた」
『そ、れはわかんないけど』
「わからねぇだ?相手の姿は見たんだろうが。誰にやられた、答えろ」
戸惑う海に強く問い掛ける。海の腰にはいつの間にか晋助の腕がまわり、答えるまで離さないと言うように抱き寄せられた。
『三味線背負ってて、ヘッドホンした男……サングラスもしてた』
「万斉か……後でしめるかァ」
『し、りあい?』
「悪かったな。うちのやつがおめぇに怪我を負わせた」
腰に回っていた腕が背中へとまわり抱きしめられる。突然のことに頭が追いついていない海は思わず、昔のように晋助の着物を縋るように握ってしまった。そんな海の態度に晋助は姿は変われど中身は変わらないのだなと一人、安堵の笑みをした。
「お前はほんとに仲間内には弱ぇな」
『仕方ねぇだろうが……でも、晋助。お前が国に仇なすってんなら容赦はしねぇよ』
「そうか」
海は腰にある刀へと手を伸ばして抜刀。#その場から飛び退く晋助の腹部の着物はぱっくりと切れていた。
「相変わらずの速さだな」
『こっちの腕は衰えてねぇからな』
「だが、そんな仮のもんじゃお前の速さにはついてこれねぇだろう」
おもむろに晋助は腰にある刀へと手をかける。晋助が触れた二本の刀を目にして海は驚き、その刀へと無意識に手を伸ばした。
もうなくなったと思っていたもの。
二度とこの手には戻らないだろうと諦めていたものがそこにあった。
『月銀……』
「お前が残したもんだ。大事にとっといてある。俺がこれをあそこに置いていくと思ったか?」
『晋助……返せ』
「返して欲しくばこの手を取れ」
『それは出来ないって言っただろ!』
「いや?お前は来るだろ」
仲間内に弱いお前なら俺の手を取るだろ?
そう言って笑う晋助。
その顔は必ず俺が晋助の元へと行くと断言しているように見えた。
『俺は一緒に行けない。晋助とは行かない』
「なら俺がお前の周りをぶっ壊してやるよ。お前を引き留めるもの全て無くしてやる」
だからこの手を取れと笑う晋助にゾクリとした悪寒を感じて海は後退る。それに合わせて歩を進める晋助に逃げられないと諦めそうになった。
「んなことさせるかバカヤロー!」
『銀……!』
この場をどうやって切り抜けるべきか考えていた海の耳に届いた銀時の声。壊れた屋台の中から這い出てきた銀時が海と晋助の間に割り込むようにして入る。
海を背に守るようにして晋助と対峙する銀時。その背中はとても頼りがいのある強いものだった。
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