第15幕
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「海さん!海さん!あっちにたこ焼きありやすぜ!」
『総悟……向こうにかき氷もあるからな。ゆっくり回ればいい。うん』
「てめぇはなに総悟と一緒に祭りを楽しんでんだゴラ!」
『楽しんでなんかねぇよ。ちゃんと見回りしてるだろ』
「その割にはてめぇの腕の中は食いモンで溢れてんじゃねぇか!」
鋭く睨んでくる土方の視線から逃れるために距離をおいて歩く。抱え込むようにして持っているのはここまでの屋台で買ってきた食べ物。りんご飴や綿菓子、焼きそばやイカめし、焼き鳥に今川焼きなど種類豊富に買ってきた。
『しょうがねぇな。ほら、土方これやるから機嫌直せって』
「てめぇ、仕事する気あんッ……むぐっ!?」
文句ばかり言う口には今川焼きを突っ込んでやろう。
無理やり土方の口へと今川焼きを突っ込めば、大人しく咀嚼し始めた。もぐもぐ食べてはいるが、海を見る土方の瞳には鋭利さが残っていた。
半ば呆れ気味の土方に袋を手渡す。渡した袋の中身を土方が見ている間に海はふらりと歩き出す。どうせ中を見たらキレ散らかすのだ。グチグチと文句を言われる前に退散した方が吉だ。
『総悟、何してんだ?』
土方から離れ、一人単独行動していた総悟を見つけて声をかける。なにやら楽しそうにしている総悟にやはり祭りはこうでなくちゃつまらないな、と密かに笑った。
「あぁ、海さん見てくだせぇ。射的ですよ」
エアガン片手にイカめしを食べている総悟の隣へと立つと、総悟と海の間からひょこりとオレンジ色の頭が飛び出してきた。
「海!久しぶりネ!海も祭りに遊びにきたアルカ?」
『遊びにではないんだけどな?今日は人がいっぱい来るから見回りをしてるところ』
「じゃあ一緒に遊べないネ」
しょげる神楽を見てしまうとこちらも悲しくなる。また今度休みの日にでも遊びに行くよと約束を交わせば満面の笑みで「待ってる!」と言われた。
『それより二人とも。店主を揶揄うのはやめろ』
射的の店主へエアガンの銃口を向ける総悟にやめなさいと一声かければ、ムッと拗ねたように海を見上げる。
『エアガンといえども、至近距離で撃たれれば怪我するかもしれないだろ?』
「へい……」
大人しくライフルを台の上へと戻す総悟を見て、店主は「助かった……」と胸を撫で下ろすが、別の方向から飛んできた弾にまた頼りない声をあげた。
『こら!神楽もいい加減にしなさい!』
「……はーい。命拾いしたなマダオ」
「おじさんは命を狙われてたの!?」
『子供らがご迷惑お掛けしました。すみません』
海が軽く頭を下げて謝ると、グラサン男は狼狽えながら大丈夫だと言って笑った。
『総悟、神楽。あのおじさんが優しい人だったから良かったけど、他の人だったら怒られてんだからな?もう次はやるんじゃねぇぞ?』
「「(グラサンが鼻の下伸ばして海のことみてんじゃねーよ)」」
『おい、2人とも聞いてんのか?』
海の顔を見ずにグラサンのことを睨みつける二人に海は深くため息を零し、子供たちの反抗に疲れた顔をした。
グラサンをジト目で見つめている二人を放って、海はふらりと人混みの中へと紛れていった。
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