第14幕
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「なんだこれは……」
海が男たちを詰め込んだと言って案内した先は会議室。襖を開いて中を見ると多数の攘夷浪士が手足を縛られた状態で転がされていた。
「あ、土方さん。海さん見つかりやしたか?」
『総悟も帰ってたのか。お帰り』
「ただいま戻りました」
先に会議室に来ていた総悟が倒れている男たち一人一人の顔を覗き込んでいた。
土方と海の元へと駆け寄り、共に寝転がっている浪士たちを眺める。
土方は呆然と会議室を見渡す。ざっと数えただけでも四十人ほどいる浪士たち。この人数をたった一人で捕まえたというのか。しかも療養中の人間が。
後ろで暇そうに立っている海に顔を向けると眠そうに目を擦っていた。
『悪い……まだ本調子じゃねぇんだわ。後片付けは頼んでもいいか?』
ふわっと欠伸をする海に戸惑いながらも頷き返す土方。
「海さん、背中はもう大丈夫なんですかィ?」
『ん、怪我の方はもう痛みもない。ずっと寝てたから体力落ちてるけど……』
「今まで寝たきりだったようなやつがこんなことできるのかよ……」
ぼそりと土方は呟く。総悟と話している海には聞こえてはいないだろうが、その言葉には若干の畏怖の念がこもっていた。
「……こりゃ近藤さんも度肝抜くかもな」
転がる攘夷浪士を見ながら土方は小さくため息を零した。
⋆ ・⋆ ・⋆ ・⋆
「そうか。海が屯所を守ったのか」
翌日、屯所に帰ってきた近藤に昨日の出来事を報告したら大層驚いていた。
「あぁ、たった一人で四十人ほど相手にして無傷だったよ」
「はっはっはっ。それは凄いな!」
「なぁ、近藤さん。海は何者なんだ?」
「どういう意味だ?」
「寝たきりに近かったやつがいきなりこんなこと出来るわけがねぇだろ。それなのにあいつはたった1人で屯所にいた攘夷浪士を全員縛りあげやがった。こんなことやってのけられるようなヤツはうちにはほぼ居ねぇよ」
それは自分にも無理だろう。そう付け足せば、近藤は腕を組んで唸った。
「それほど海がすごいってことだろ?」
「凄いとかのレベルじゃねぇ。近藤さん、あいつは俺たちと会うまでどこで何をしてきたんだ?」
「トシ、それは聞かない約束だろう」
にこやかに笑っていた近藤さんが目を細め神妙な面持ちで話す。海の素性は何も知らない。本人も話す気がないのかそれとなく聞いてみてもはぐらかされる。
海を連れてきたのは近藤だ。
ボロボロの状態だった海を近藤が拾ってきた。散歩中に空から降ってきたのだと叫んでいたのは昨日の事のように覚えている。
どこから来て何をしていたのかも知らないのに近藤は昔からの友人のように海を迎え入れ、真選組の一員とした。
「近藤さん。俺はあいつが何者であっても真選組の一員として認めている。だからあいつに聞いてくれないか?」
土方が聞いてもはぐらかされてしまうかもしれない。だが、命の恩人である近藤であれば、海は語るかもしれない。海のことを知りたいと急く気持ちを抑えて近藤に聞くも、近藤は渋い顔で首を横に振った。
「……海が自分から話すまでは聞かないでいようと思ってるんだ」
「そんなのいつになるかわからねぇだろ」
「それでもだ。いつか海が話してくれる日まで。海が俺たちに全てを話しても構わないと思ってくれる日まで。待ってやってくれねぇか?」
すまねぇ、と近藤に頭を下げられてしまえば、もうそれ以上は何も言えない。土方は納得いかない表情を浮かべつつ、わかったと一言返した。
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