第14幕
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「総悟、戸を開けるから手ェ貸せ」
「へいへい。まったく、土方さんは人使いが荒くて困りますぜ」
「文句言わずに手を動かせ、手を!」
今朝方、屯所に攘夷浪士が隠れ家として使っているかもしれないと町民から寄せられた通報を頼りに、土方は屯所にいた隊士達を引き連れてとある廃屋へと来ていた。
既に裏口には他の隊士達を固めている。逃げ出そうとしたら一人残らず捕まえろと指示を飛ばした。
そして、土方と総悟は廃屋の表玄関からの突入を担っていた。固く閉じられた戸を二人がかりで開ける。
「一人も逃すんじゃねぇぞ」
「そんなんわかってます。土方さんこそ取り零すなんてヘマしないでくださいよ?」
「誰に言ってやがる」
「土方コノヤロー」
「てめぇ!!攘夷浪士じゃなくて、てめぇからたたっ斬るぞ!!」
「さァて、仕事しやすかねぇ」
すたすたと廃屋の中へと踏み込んでいく総悟の背中に向かって土方が吠えるが、総悟は何処吹く風と聞き流していた。
電気が通っていない薄暗い廃屋。外から差し込む太陽の光だけが、土方たちの足元を微かに照らしていた。そんな視界の悪い中、二人は慎重に部屋の中を探索する。些細な物音も聞き漏らさないように気を遣いながら周りを警戒し、攘夷浪士を探した。
時間を掛けて廃屋の一階部分を隈無く探したが、攘夷浪士の姿はどこにも無かった。軽く拍子抜けした土方が一息ついた時、クイッと上着が引っ張られて後ろを振り向く。
総悟が無言で何かを指差していた。その指の先には二階へと上がる階段。土方と総悟はアイコンタクトで階段をあがることを互いに認識する。
土方が階段に足をかけるとギシリと木の軋む音が辺りに響いた。その音にどくりと心臓が強く跳ねる。じわりと嫌な汗が額に滲むのを感じながらゆっくりと階段を上がって行く。
二階も一階同様に探し回ったが、人影は見当たらない。それどころか人がいた気配すらも感じられなかった。
「どうなってんだ。まさか通報がガセだったのか?」
「ちっ……嵌められやしたか」
「クソッ、裏にいる隊士達を集めろ!」
急いで廃屋から出る土方と総悟。総悟は裏口で待機している隊士たちを呼びに走り出し、土方は廃屋近くに停めてあるパトカーへと戻って無線を飛ばした。
「こちら真選組副長、土方だ。外でパトロールをしているやつらは厳戒態勢を取れ!」
今回の通報が攘夷浪士からのものだったら。味方を逃がす為の工作だったら、これからテロを起こすためのブラフだとしたら。至極めんどくさい事になるだろう。なんせ、今屯所は……。
「総悟!おい、総悟!!」
「なんですかい、土方さん」
「急いでかぶき町全域に厳戒態勢を広げろ。ヤツらなにか仕出かすかもしれねぇ」
土方の言葉に総悟は目を見開いて驚いたかと思えば、何か考え込むように目を細めた。
自分たちも町へ戻ろうとパトカーへ乗り込む。土方が車のキーを回してエンジンを吹かしている間に飛び込んできた無線に総悟が騒ぎ始めた。
「土方さん!これ聞いてくだせぇ!」
「あ?!」
助手席に座る総悟が無線機を指差しながら土方を呼ぶ。その顔は焦りの表情に染まっていた。
"全真選組隊士に伝達!全真選組隊士に伝達!かぶき町真選組屯所にて攘夷浪士が多数侵入しているとの報告!至急、屯所に戻られよ!"
「土方さん……今、屯所って……」
「まずい……海以外誰もいねぇ!!」
「ここから飛ばしても1時間はかかりやすぜ!?」
総悟の言葉に舌打ちをし、屯所までの最短ルートを考える。速度超過なんて気にせず走り出す土方に、総悟がパトカーのサイレンを慣らして緊急であることを周りに示した。
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