第13幕
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『銀時……』
「痛かったろ」
『別にそんなには……』
「我慢すんな。痛かっただろ?」
痛みは酷かった。動く度に背中の傷が刺激されるし、背中以外の怪我も治りかけだったから水が当たれば染みるし、服を着替えときに擦れて大変だった。
痛みを我慢していたのは自分なのに。それなのに何故か銀時の方が大怪我を負って苦しんでいるかのような顔をしている。
そんな顔をされてしまってはこれ以上誤魔化すことは出来ない。正直に小さく頷けば、銀時はため息をついた。
「お前はいつもそうだよな」
『え……?』
「無理して我慢して、痛いのも辛いのも悲しいのも全部隠して。なんもないようなフリして笑って。お前はそういう時だけは隠し事が上手くなるんだよ。普段はすぐにバレるのに」
怒られると覚悟していた海に投げかけられた言葉はなんとも優しい声色。俯いていた海の頭に銀時の手が乗り、子供をあやすように優しく撫でられて緊張していた身体は一気に脱力した。
「海、辛いなら痛いなら言ってもいいんだからな?言ってくんなきゃ俺もわかんねぇし」
優しく問いかけるように紡がれる言葉。もう我慢なんかしなくていい、全部ここで吐き出しちまえよと誘う銀時に海はぽつりと呟く。
『……痛かった』
「うん」
『痛くて……辛かった。薬飲んで抑えようとしたけど、間に合わなくて……でも、辛そうにしてたらアイツらに心配かけちまうから』
「かけたっていいんだよ。そうやって隠される方が辛いんだから。海が一人で我慢してる方が何十倍も辛いの。分かる?」
『ごめ、んなさい』
今まで我慢していたものがボロボロと零れていく。周りに気を遣っていたため、ストレスが溜まりに溜まっていた。
「海、こっちおいで」
腕を広げて海が飛び込んでくるのを待ち構える銀時。今すぐその腕の中へ縋ってしまいたいと思う反面、ここで縋ってしまったらまた銀時に負担をかけてしまうという二律背反で戸惑っていたら、銀時が海の腕を掴んで引っ張った。
「なに戸惑ってんの」
無理矢理という形で銀時の胸へと飛び込む。背中の怪我に触れぬように銀時は海の腰を抱いて密着した。
『お前に負担はかけたくない、んだよ』
「これぐらい負担でもなんでもねぇよ。だから気にすんな」
とんとんっと腰を撫でられる。大丈夫だからと言い聞かせるように銀時は何度も海に呟いた。
そんな銀時の優しさに海の目から徐々に零れていく雫。それは銀時の肩を濡らした。
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