第2幕
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追従していたパトカーが止まり、中から隊士達が慌てて飛び出してくるのを見てちらりと総悟の方へと目を向ける。
『ここで合ってるのか?』
「山崎が言うにはここらしいですよ」
『お前場所知ってたんじゃないのか?』
「さぁ?俺は土方さんに出ろと言われただけなんで。場所までは」
『お前なぁ……。場所くらい聞いておけよ……って、俺もか』
首を横に振る総悟に呆れた顔をしたが、自分も場所を知らずに車を走らせていたのだ。互いに場所を知らなかったなど露知らず。先程のパトカーを追わなければ自分たちはいつまでもここに来られないまんまだったのかと思うと海はまた深いため息を漏らした。
「それに海さんに場所を言っても迷うじゃないですか。これだから方向音痴は困るんでい」
『いや、待てよ。場所がわからなきゃ方向音痴も何もねぇだろ』
総悟は素知らぬ顔で「そんなこと知りやせーん」と呟く。そんな総悟の頭を軽くひっぱたくと、暴力反対とかゴリラとか文句垂れ始めたので再度栗頭を叩いた。それでもぶつくさ文句言う総悟を無視してパトカーを降りる。
軽い足取りで建物の中へと足を踏み入れれば、中では既に土方が現場の指揮を取っているのが見えた。土方の指示通りに忙しなく動き回る隊士たちを横目に、海はひっそりと土方の横につく。
「刀は持ってきたんだろうな」
『仕方ないから持ってきた。仕方ないからな』
「なにてめぇは拗ねてんだよ!シャキッとしろシャキッと!」
『あ?俺はこれでもシャキシャキだわ。採れたてのレタスみたいにシャキシャキだわ』
「シャキシャキうるせぇ!」
くわっと目を見開いて怒鳴る土方に海はつーんっとそっぽを向いて無視。まだ何かを言おうとした土方だったが、海の態度にそれ以上怒る気も失せてしまったのか小さくため息を漏らしただけで何も言うことは無かった。
そんな時、一人の隊士が土方へと声をかける。隊士全員突撃体制が完了したとの報告に土方はゆっくりと頷いた。そして一瞬の海と土方のアイコンタクト。敵の包囲は完了した。ならばこちらから攻めるのみ。その意図を汲み取った海は静かに頭を縦に振った。
「御用改めである!神妙にしろ、爆弾魔ども!」
襖を蹴破って中へと押し入る土方と隊士たち。その後ろから海もゆっくりと中へ入る。左側に携えている刀の柄に右手をそえて何時でも抜刀出来るようにし、周りの気配を探るように神経を集中させた。
『(なんであいつまでいるんだか……全く。腐れ縁ってのは切っても切れないもんなんだな)』
土方が襖を蹴破った時に見えた人物。いつも追いかけている人間とは別の顔がいて驚いていた。まさかこんな所で再会を果たすとは思ってもみなくて、思わず声を出しそうになり慌てて口元に手を翳す。
それでも身体は正直で真っ直ぐ彼らの元へと向かっていく。海が犯人達に接触しようとしていることは土方も他の隊士達も気づいていない。それどころか、目の前で言い合っている昔馴染み達も気づいていないのだ。
自分の存在に気づいていない2人は昔と変わらない口喧嘩をしている。彼らと別れたのはもう随分と前なのに。それでも変わらない関係に海はふっと笑みを漏らした。
会話の一部しか聞き取れなかったが、長髪の男が銀髪の男をテロに巻き込んだというのはわかった。
「いかん!逃げろ!」
懐かしさに浸っていた海の耳に焦燥の声が入る。ここに何しに来たのかを忘れてしまうほど海は二人のことをじっと見つめすぎていた。己の仕事を放棄して。今は警察とテロ組織による乱戦状態だ。自分は彼らを捕まえるべき立場の人間であり、仲良しこよしをするためにここに来たのではない。
真選組の姿に狼狽える攘夷浪士たちに長髪の男が逃げろと声を荒らげた事により、周りの浪士たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ回る。その対応に追われる隊士たちの目を掻い潜って、海はテロ首謀者を追うべく走り出した。
『相変わらず無茶な生き方してんな』
「なんなんだよコレェ!てか、お前……!」
『よぉ、銀時。元気してたか?』
警察から逃げ出した彼らの後を追っている途中、不意に銀髪の男がこちらを振り向いた。一度は見て見ぬふりをしたみたいだったが、何かに気づいた彼はもう一度海の方を振り向いた。
漸く自分の存在に気づいた銀色が驚愕の顔で口をパクパクさせる。驚きすぎて言葉を失う彼の横にいた二人の子供もこちらを見て驚きの表情を浮かべた。
メガネを掛けている方は海を見るなり青ざめた顔をし、チャイナ服を着た少女の方はきょとんとしていた。
彼らもまた昔馴染みに巻き込まれた被害者なのだろう。子供をテロに巻き込むなんて何を考えているんだ。落ち着いた頃にでも注意しなくては。
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