第2幕
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自室にて書類整理をしていると、バタバタと縁側を走り去る足音が響いてきた。屯所内は走り回るなと土方に言われているだろうに。ここは公園ではないと何度言えば気が済むのか。廊下を走る隊士達を叱ろうと、ため息を零しながら障子へと手を掛けてゆっくりと戸を開いた。
「おい、仕事だ」
『廊下は静かに歩けと言わなかったか?』
「緊急事態だ。お前も帯刀して出る準備しろ」
『またテロか?』
戸を開いたすぐ真横に立っている男へと視線を動かす。そこには真選組副局長、土方十四郎が煙草をくわえてめんどくさそうな表情を浮かべていた。
『俺はお前たちが処理しきれてない書類をやってるんだが?』
「今日は書類じゃなくて指名手配犯を相手しろ。やっとしっぽを出したんだ。この機にやつを討つ」
腰にある刀を握りニヤリと口角を上げる土方に嘆息。真選組がチンピラ警察と呼ばれるのはこいつのせいではないのだろうか、と思ったが口にせずに押し黙った。
この男の発言は今に始まったことではない。むしろ前々からやめろと注意していたことだ。一言目二言目には斬るだの殺すだのと物騒な言葉を吐くこいつに何度文句を言ったことか。
上の人間がこれでは下もそれに倣ってしまうというもの。同僚の隊士達の言葉が荒いのは確実にこの男のせいだろう。
『お前の存在がチンピラだもんな』
「人の顔をまじまじ見ながら何言ってやがる。てめぇ、斬られたいのか?」
思わず呟いてしまった言葉に土方がピクっと眉を上げる。怒りを露わにする土方に海は知らぬ振りを通した。
『こっちの話だこっちの。んで、場所はどこだよ』
「総悟が車を出して待機してる。場所は総悟から聞け」
そう言って土方は海の前を通り過ぎて屯所を出て行った。現場へ行くとは言っていないのだが、なんて言葉は彼の耳には届いていないだろう。かといって行かなかったら後がめんどくさい事になる。再度ため息をついてから刀を手に取り部屋を出た。
屯所の門へと近づいていくと、門前で停まっているパトカーが一台。既に助手席には総悟が乗り込んでいて、海を見つけると窓を開けて手をひらひらと振ってきた。
「遅かったですね」
『さっきまで書類片付けてたんだよ。出動要請なんか聞いてねぇ』
「何言ってるんでさぁ。屯所内での報せは届いてたはずですけど?」
『部屋にこもってたから知らん。それにそうなってるなら電話掛けてくれよ』
自室にこもって書類に集中していたせいで何も分からない。そんなに大事ならば連絡を飛ばしてくれと悪態つくも、総悟はニマニマと笑うだけだった。
車の無線機から流れる緊急出動要請を耳にしつつ、空いている運転席へと乗り込む。
総悟から渡された車のキーを差し込んで回してエンジンをかける。
バックミラーを確認すれば後ろからサイレンを鳴らしながら近づいてくる一台のパトカー。きっと行く先は同じだろう。横を通り過ぎていったパトカーを追従するようにゆっくりとアクセルを踏んで車を発進させて目的地へと向かった。
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