第10幕
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「銀ちゃん!」
「銀さん!!」
銀時の姿を見てぱたたっと走り出す子供らを少し離れたところから桂と共に眺める。
「海、そちらは大丈夫だったか?ある程度敵は誘導しておいたが」
『ありがとな。大分楽に逃げれた。桂のおかげだわ』
「子供を二人連れているのだ。それくらいのことは任せろ」
『ほんとに助かった』
今日一日の間に色んなことが一度に起きて疲れているであろう銀時。表情に疲労が浮かんでいるのが見えたが、新八と神楽の姿を見た途端にその顔は安堵へと変わったのが見えて思わず笑みがこぼれた。あの子供らをちゃんと守った甲斐があったなと。
「探してるみたいだがいいのか?」
『どうせ顔だしたら長話になるだろ?大人しく帰らせて頂きますよ、俺は』
誰かを探すように辺りをキョロキョロと見回す銀時を見て桂が一声かけてきたが、それに従うことなく海は身を隠した。
「これで転生鄉が街に広がることは無いだろう」
『これで真選組の仕事も増えるけどな』
「こんなものを野放しにしていた幕府が悪い。いや、海は悪くないがな?」
『桂っていつも俺を甘やかすよな』
「そんなことはない!いつも私は厳しくしているつもりだぞ?」
『それで厳しかったらうちんとこの隊士達は泣いて喜ぶよ。もっと厳しいやつがいるから』
厳しく、理不尽なやつの顔がぱっと思い浮かぶ。煙草を吸いながら瞳孔開きっぱなしのあの顔が。
「海も丸くなったものだな」
『え、太った?』
「そういう意味ではない!いや、海はもう少し肉をつけろ!」
『銀時にも言われたな……』
「お前は痩せすぎだ。しっかり三食摂っているのか?」
『食べてるよお母さん』
「ならいいが。丸くなったのは性格の方だ。昔なら進んで敵陣に突っ込んでいくような戦い方をしていただろう。それが今回は子供を守るためとは言えども、戦闘を避けた道へと進んだではないか。あの頃とは大違いだ」
ただ単純に道に迷っていた。しかも変な男に絡まれて満身創痍の状態。なんて言ったら目の前の友人はなんて言うだろうか。
『そ、そうか』
「成長したのだな。海も、銀時も」
『大切なもんが増えたからな。守るためには自分が死んでたら意味がないって気づいただけだよ』
あの頃はただ戦うことしか頭になかった。敵を斬り倒せばいつか終わる。奴らを根絶やしにすればもう仲間を失うことなんてないんだと。そう思って刀を振るい続けていた。
それでは誰も守れないと気づいたのは真選組に入ってからだったが。
『さて、俺はもう帰るよ。非番と言えども長く屯所を留守にしてるとうるさいのが探しに来ちまうから』
「悪かったな。こんなことに付き合わせて」
『別に。たまにはいいかなって。昔馴染みとまたやんちゃするのも』
「そうか……ところで海」
『うん?』
「お前から血の匂いがするんだが気のせいか?」
『あぁ、これか?銀時の血が染み付いてたみたいなんだよ。この上着借りた時に気づいた』
「……そうか」
『おう。んじゃあ、せいぜい捕まらないようにな』
桂の顔を見ずに足早にその場を離れた。
きっとあいつは気づいているだろう。ならば深く追求される前に逃げるのが一番。
屯所まで気を抜かぬように。少しでも痛む素振りを見せたら桂に引っ張りだされるだろう。無用な心配をかけるのだけはごめんだ。
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