第9幕
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「踏ん張れ、おい。絶対死なせねぇから」
たくさんの死体が辺りに転がる中、まだ息のある味方を背中に担いで歩く。戦い疲れて拾うの溜まった体で人一人を担ぐのは至難の業。時折、蹴つまづいて転びそうになるが、なんとか踏ん張って歩き続けた。
桂や海のいるところまでこいつを連れていくことができたらきっと助かるだろう。
完全な手当をすることは出来なくても、応急処置くらいは出来るはずだ。それに海が絶対に死なせないはず。仲間を見捨てることをしないアイツなら絶対に。
「俺が必ず助けてやるからよ」
だから諦めずに生にしがみつけ。そう呟いた銀時の耳に入ったのは否定的な言葉。
“捨てちまえよそんなもん”
「はっ……!?」
周囲から聴こえる声に耳を疑う。
骸しかいない場所から聞こえてくるのは負の感情。背負っているこいつを捨てろと誘うものだった。
“どうせそいつは助からねぇ。てめぇには誰かを守るなんてできっこねぇんだ。今まで1度だって大切なもんを守りきれたことがあったか?目の前の敵を斬って斬って斬りまくって……それで何が残った?ただの死体の山じゃねぇか。てめぇは無力だ。もう全部捨てて楽になっちまえよ”
目に映るのは仲間たちの最期。
攘夷戦争にて犠牲となった奴らの骸。
昨日まで笑い合っていた仲間が一人、また一人と物言わぬ存在となっていくのを嫌でも見てきた。
それでも背にある命を、たった一つの命を守るために歩みを進める。
“お前に守れるものは何もねぇんだよ!あの時だって!”
背負っているやつが骸として起き上がる。
ふと、思い出すのは海が崖から落ちていく瞬間の記憶。俺たちを庇って一人、暗い場所へと行ってしまう彼。
引き上げる為に必死に伸ばした手は空を切って海には届かなかった。
笑いながら安心したような笑みを浮かべていた彼が「よかった」と呟いたのが今でも耳に残っている。
「海、海ィィィィィ!!!!」
ひたすら海の名前を呼び続けたが、光の見えない闇の中では海の姿は見えない。
ただ残されたのは空虚感だった。
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