第1幕
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「──ん──さん……海さん」
何度も自分の名前を呼ぶ声に薄らと瞼を開ける。まだ眠さ残る顔で声のした方を見ると、助手席に座っている総悟が呆れた顔をしていた。
『どうした?』
「どうしたじゃないですよ。聞き取りから戻ってきたら海さん寝てるじゃないですか」
『悪い。寝るつもりはなかったんだが』
見廻りの途中で寝てしまうとは思わなかった。いくら疲れているとはいえ、聞き取りを総悟に任せて自分はうたた寝しているなんて。
緊張感がなさすぎる。いつ攘夷浪士が襲ってくるか、またテロを起こすか分からないというのに。
「ちゃんと休んだ方がいいですぜ。海さんはすぐ無理するんですから」
『無理しているつもりはないんだけどな。次からは気をつける』
「そうしてください。海さんが倒れたらうちは崩壊するんで」
『なんでだよ。たかが平隊士一人倒れたところで真選組は崩壊しねぇよ』
「そう思ってるのは海さんだけですよ。近藤さんも土方さんも海さんが倒れたなんて聞いたらすっ飛んできやすぜ?」
『飛んでくるな。仕事しろ』
局長と副長が倒れたのであれば分かるが、平隊士の自分が倒れたくらいでは真選組は揺るがない。そんなの誰に聞いてもそう答えるはずだ。
それなのに総悟は海の言葉にやれやれと手を上げてため息をつく。
「分かってないですね。それ程、海さんの存在は大きいってことですよ。近藤さんや土方さんだけでなく、他の隊士たちだって飛んできやすよ」
『そんな暇があるなら見廻りに行けよ。今が一番クソ忙しいのは分かってるだろうが』
度重なるテロのせいで寝る暇もなく動いている。昼夜構わず見廻りに出ているせいで生活リズムは崩れ、体調を崩している者も多くなってきた。
首謀者を早く捕まえなければ本当に真選組が崩壊する恐れがある。
『夜の見廻りは誰が担当してるんだ?』
「今日は土方さんですぜ。まさかついていくつもりで?」
『一人で出たら危ないだろ。近藤さんは今日居ないし』
「それなら俺が行きますよ。海さんは休んでください」
『ダメだ。総悟は昨日行っただろ。今日は休め』
「一日くらい平気ですよ。海さんはほぼ毎日じゃないですか」
見廻りの事で暫く言い合っているうちに段々と日が落ちてきていた。これでは埒が明かないと判断し、海はパトカーを発進させる。
『そこまで言うなら好きにしろ。その代わり、書類などはちゃんと片付けろよ』
「書類と見廻りは関係ないじゃないですか!」
『こちとらお前が隠してた書類の処理に追われてんだよ。それさえ無ければ休めるんだが?』
「そ、れは……頑張ってくだせぇ」
『殺す気か』
残っている書類の量を思い出して海は肩を落とす。部屋にある物の大半は総悟が目を通さなければならないものばかりだ。
見廻りばかり行く総悟は書類には全く手をつけない。そのせいで、海の仕事が徐々に増えていく。休めと言っている割には、仕事を押し付けてきている総悟。
もう呆れて言葉にもならなかった。
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