第1幕
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目に見えるのは一面の赤と死体の山。朝から天人相手に戦い続けていた身体は疲労と怪我でボロボロだった。それでも海は引きずるように足を動かす。足元に見えたのは、つい先程まで笑いあっていたはずの同志。
虚ろな目で空を見つめているように見えたが、もうその眼は何も映してはいないだろう。
『あとは……どいつだ……』
「くそ!雑魚一人にどれだけ手間をかけているんだ!早く殺せ!」
満身創痍である人間の前に立ち塞がる天人。海一人倒すのに時間をかけているのが気にくわないのか、集団の中の隊長らしき天人が吠える。その声に背を押されるようにして周りの天人らが己の武器を強く握りしめながらにじり寄ってくるも、彼らの顔には今すぐ逃げたいと書いてあるように見えた。
『その雑魚相手に手こずってるのはお前らだろうが』
顔を赤くして怒鳴り散らす天人を嘲笑う。命令だけして、自分は他の天人達を盾にして逃げ回っているようなやつだ。アイツさえ潰してしまえば、この隊は分裂するに違いない。
余裕な態度の海に天人は「たかが人間風情がッ!」と悔しげな表情で忌々しげに呟く。戦場において冷静さを欠くのは命取りになる。指揮を担っている天人は怒りで周りが見えていない。
まともな者であれば海の言葉など気にせず流したはずだ。怒りを誘発させる言葉など。
『馬鹿な頭を持ったことについては同情するが……手を抜く理由までにはならないな』
目の前で立ち尽くしている天人に向けて一閃。飛んで行った首が地面に転がるのを周りの天人達は青ざめた顔で眺めていた。
刀についた天人の血を振り払うと地面に赤が散る。そんな動きでさえ天人の恐怖を増幅させたらしく、天人は一人、また一人と後退していった。
「お前ら!退くんじゃない!こんな人間に怖気付くな!」
もはや彼らは海に武器を向けることすらしていない。ちらほらと天人たちは逃げ出していき、その場に残ったのは隊長格であろう者と体格の良い者が数人。
「使えんヤツらめ!あの者らは後で反逆罪として処罰する!」
『お前が無能なだけだろ』
「人間風情が私を愚弄するだと!?」
『その人間風情に手こずっているような天人様だろ?自分よりも下等な者にこれ程まで翻弄されているのにまだ自分が優位に立っていると?まだ己が優れていると思い上がってるのか?』
なんとも哀れな天人だ。現実を受け入れられずに地団駄を踏む天人に海は呆れて怒りすら湧き上がってこない。
「うるさい!黙れ黙れ黙れ!!お前ら!こいつを殺せ!今すぐ八つ裂きにしろ!!」
顔を真っ赤にして怒鳴り散らして海を指差す。命じられた天人はにちゃりと気持ち悪い笑みを浮かべながら武器を手にしてにじり寄ってくる。
『哀れすぎて何も言えないなこれは』
その場にいた天人らを片付けるのに数分とかからなかった。
ゴロリと転がってきた首は驚愕の顔で固まっている。
『来世では無能な上司に当たらないようにしろよ』
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