第29幕
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『また明日から忙しくなるな』
「休める時には休めよ」
『分かってる。うるさいのが何人も居るからな』
「わかってんなら今すぐ寝ろ。どうせ本でも読んでたんだろうが」
『なに?お前もついにストーカーに目覚めたわけ?』
「違ぇ。つか、お前が言ったんだろうが。夕餉の時に」
『そうだっけか?』
そんなことを言っただろうかと記憶を辿る。今日の夕飯の時。いつものように土方と総悟と食べてた。あ、確かに言った。
今日は新しい本を手に入れたから、邪魔をするなと。
『忘れてたわ』
「自分で言ってて忘れてんじゃねぇよ」
深いため息をつく土方に笑いやがら謝る。そのおかげで今の今まで読書を邪魔されずに済んでいたのか。
『ありがとな、土方。おかけでゆっくりできた』
「俺は何もしてねぇよ。たまにはゆっくりさせろとしか言ってねぇ。ほかの奴らが気を使ったからだろ」
『土方がそうやって声をかけてくれたからだろ?』
「……別に」
照れたようにそっぽ向く土方に笑みが零れる。本当にこいつは素直じゃないな。
「あれ、こんなところでなにしてるんでい」
『総悟?』
眠そうに目を擦りながら歩いてくる総悟。
海がおいでと手招きすると、総悟は倒れ込むようにして海の元へといく。
『眠かったら寝てろよ』
海の太腿に頭を乗せて横になる総悟。その顔は年相応だった。さらさらの栗色の髪を梳くように撫でていると、徐々に寝息が聞こえてくる。
「ったく……総悟もまだまだガキだな」
『仕方ないだろ?まだ10代なんだから。ガキで結構。子供らしいところがあって可愛いじゃねぇか』
「真選組にいるんだったらもう少し気を張りつめた心構えをしろよ」
『眠い時くらいはそんなのいらねぇよ』
「お前がそうやって甘やかすから軟弱になるんだろうが」
『そういう土方だって甘やかしてるだろ?』
「してねぇ」
『いいや、してる』
総悟が寝てる手前静かに言い合いをする辺り、総悟に対しての優しさは2人とも同じくらい。そんなしょうもない言い合いを繰り返しているうちに、バカバカしくなって笑い始めた。
『なんかアホらしくなってきたな』
「お前が先に始めたんだろうが」
『はいはい。今回は俺の負けでいいよ』
「なんの勝負してたんだよ」
『さぁ?』
くすくす笑う海に土方も緩い笑みを浮かべた。
「いい加減お前も眠いんじゃねぇか?」
『酒が回ったかな、少し眠い』
「明日も早ぇんだから寝ろ」
『ん……土方。肩貸せ』
「いや、お前布団で寝ろよ。お前の部屋すぐそこだろうが」
土方の腕を引いてその肩にもたれかかるように寝る海。土方は海を起こして部屋へと行かせようとしたが、既に海は夢の中へと片足踏み込んでいた。
「おい、海」
『んー……少しだけ』
「風邪ひいても知らねぇぞ」
『…………』
「ったく……」
酒をあおりながら月を眺める。
右側ではすやすやと眠る海と総悟。その姿は嫁と息子を見守る父のようなもの。
海が起きるまでの間、暫く2人をみて優しい笑みを浮かべていたそうな。
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