第25幕
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『どこにいるんだよ……あいつらは』
かぶき町を走り回って小一時間。屯所を出てからかれこれ2時間ほど経っている。見回りに出たのも遅い時間だったので、もう空はオレンジ色から紺色へと変わりつつあった。
『とりあえずここに来てみたけど……どういう状況だよこれ』
銀時がいられる場所といえば限られてくる。江戸を周っていると聞いたから、思い当たる場所を回ってみたのだが一向に本人に出くわすことは無かった。
もう家に戻っているのだろうかと思い、万事屋へと来たものの何故かでかい風穴が空いていた。何かがあの二階部分にぶつかったかのようだった。
『銀時……』
これだけ探しても見つからないなんて。
あいつは一体どこにいるんだ。もしかして万事屋がこの状態なのだから、新八の所に世話になっているのだろうか。
万事屋に背を向けて新八の家へと歩き始めた時、後ろから声をかけられた。
「あの……さっき僕の名前を呼びましたよね?貴方も僕の知り合いですか?」
いつもより覇気のない声。それでも聞き覚えのある声に海は勢いよく振り返る。
そこにはしょぼくれた顔の銀時が立っていた。
『お前……』
「あの……今僕、記憶喪失みたいで……何も思い出せないんです。君は僕のなんだったんですか?」
『俺は……銀時の幼馴染だよ』
「幼馴染……。じゃあ、僕のことを子供の頃から知っている人……なんですね?」
『あぁ。同じ学び舎で勉強して、同じ釜の飯を食って、一緒に……』
攘夷戦争時代を生き抜いた仲間。
そう言おうとした口を閉じる。今の彼にそんなことを言っていいのだろうか。記憶が混乱するだけであって、思い出すことなんて出来ないだろう。
「一緒に……?」
『一緒にふざけて遊んでた仲間だよ』
そう言って海は笑った。
銀時はそんな海の笑顔に頬を赤く染める。ふいっと海から顔を背けて慌て始めた。
『銀時?』
「こんな……綺麗な人と僕は友人だったんですね」
『き、綺麗って……お前なぁ』
記憶が飛んでなければ殴っていた。
顔を赤くさせている銀時にため息をついて項垂れる。それからハッと思い出したように海は銀時の腕を掴む。
「な、なんですか?」
『お前飯は?』
「あ……」
ぐううううううっ……。
海と銀時の間に鳴る腹の虫。江戸中を歩き回っていると言っていた。ならばお腹だって当然空いているだろう。
『疲れてんだろ。飯食いに行くぞ』
「ま、待ってください!僕、お金なんて……」
『そんなもん俺が出すから気にすんな』
銀時の腕を引いて歩き出す海。銀時は引っ張られるがまま海の後を追う。困惑した顔を浮かべていた銀時だったが、ふと懐かしさを感じて笑みが零れた。
自分はこの光景を知っている。
相変わらず思い出せないけど、これと同じ場面をどこかで見たことがある。確か、その時もこの黒髪が前を歩いていた気がする。
そんな曖昧な記憶を少しずつ掘り起こしていく銀時。前のちゃらんぽらんな時の自分の記憶など思い出したくはないが、彼のことは早く思い出したいと願った。
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