第24幕
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「これ……僕の宝物なんだ」
子供たちの中の1人が銀時の座っている前のデスクにあるものを置く。やかん大王と書かれたシール。
それを銀時はじっと見つめる。
総悟が子供たちにやめろと言ったが、それでも子供たちは必死に銀時に懇願した。持っていた風呂敷をテーブルの上へと広げ、ほかの子供達が宝物としているものを差し出して。
どれも子供の玩具。お金に変えられるものなど一つもない。それでも彼らにとって大切なもの。銀時にはそれがよくわかった。
銀時は目の前に出されたドッキリマンシールを手に取る。子供たちに自分もドッキリマンシールを集めているのだと嘯き、おもむろにシールへとキスを落とす。
「こいつのためならなんでもやるぜ。後で返せっつっても遅ぇからな」
そう言って微笑んでやると子供たちは銀時が自分たちの願いを聞いてくれたのだと喜んだ。
依頼は受理された。ならば後は仕事をするだけ。仕事をしに行こうと事務所から出ようとしたが、ことの成り行きを黙って見ていた土方によってやんわりと止められた。
それでも銀時は進む足を止めずに行く。
自分の中にある大事な部分が折れてしまわぬように。曲がって違う方向へと向かぬように。
玄関の戸を開いて外へと出る。天気は変わらずに雨。お天道様も嘆き悲しんでいるような空だった。
「……お前はいつまでそんなところに立ってるんだ?」
『さぁな。頭が冷えるまでかな』
「んなことしてたら風邪引くぞ」
雨が降りしきる中にもかかわらず、傘もささずに立ち尽くす海。長い間そこに立っていたのだろう。頭からつま先までびっしょりで、髪の先から雫が垂れていた。
『銀時、あの鬼は……』
「あの人とは違う。重ねんな」
『でも……』
「違う」
海が銀時に向けて顔を上げる。いつもの強気な瞳は悲しみに揺らいでいて、今にも泣き出しそうなのを必死に耐えていた。いや、むしろもう泣いているのかもしれない。ただそれを雨粒が隠していてくれているのか。
「でももだってもねぇよ。あいつとあの人は違う。重ねて見てもなんも出てこねぇよ」
もう意味は無いかもしれないが海の上に傘をかける。俯く海を優しく抱きしめて震える身体を撫でる。
銀時と海があの鬼を通して何を見ていたのか。それはこの2人にしか分からないことだろう。
「海、少し手ェ貸してくれ」
『わかった』
海の左腰に刀があるのを見て声をかける。自分の首元に埋まるようにしていた頭が離れて顔が見えた。もうその顔には曇りはなく、代わりにあるのは怒りに燃える炎。
それを携えて海と銀時は煉獄関へと歩を進めた。
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