第23幕
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レストランを出て近くの橋にもたれかかりながら海は空を眺める。
未だに腹の中で蠢いている怒りの感情を抑え込むのに必死だった。怒りに任せて総悟にあんなことをしてしまった自分に対してのもの。
もう少し言い方を変えていれば、総悟があんな顔をしなくて済んだのに。己の感情に素直に動きすぎた結果、総悟は半ば泣きそうな顔で海の顔を見ていた。
我に返った海はすぐに総悟から手を離したが、怯えきったあの顔は頭から離れない。謝ろうとしたのだが、そのタイミングで謝ってしまったら総悟に何も伝わらなくなってしまう。
結果、海に出来ることとしたら頭を冷やすためにレストランから出ることだった。
『……これは嫌われたな』
あんだけ懐いてきてくれていたのに自分が突き放してしまった。きちんと何が悪いのかを説いてやればよかったのに。そんな簡単な事さえ忘れてしまうほど怒りに支配されていた。
『……はぁ……ガキだな、俺も』
総悟が、銀時があの場所を見たのだという事実が許せないでいる。自分もあの地下闘技場には見に行ったことがあった。
観客が騒ぎながら囲むリング。その中で戦う侍と天人。天人が人間をゴミのように扱うのを見たのだ。
今では共存している人間と天人だが、そこでは昔のようにねじ伏せられている人間しかいなかった。
そんなものを総悟や銀時には見せたくなかった。
『俺には向いてないな。誰かに優しくするってのは』
優しくするのと黙認するのとでは大きな違いである。今まで総悟がすることなすこと何も言わないで来たのだが、それが今仇となっている。自分がやってきたことが返ってきているのだ。
優しさと履き違えた放任。
もしかして今回のことは自分が招いた種でもあるのでは?と思えるほどのものだった。
「海さん!」
『ふぁい!?』
落ちていく気分の中、総悟のでかい声が聞こえて思わず気の抜けた声が出た。慌てて声がした方へと顔を向けると、強ばった顔でこちらを見ている総悟の姿が目に映る。
『何しに来たんだよ……』
「海さん……俺は散々貴方に甘えてばかりでした」
総悟は真っ直ぐ海を見て口を開く。海は黙って総悟の言葉に耳を傾ける。
「どれだけ海さんに迷惑をかけていたのかなんて考えもせんで、ただ自分がやりたいようにやってたんです。でも、それがどんだけ海さんを困らせていたのかわかりやした。許して欲しいとは言いやせん。けど、謝らせて欲しいでさァ」
そう言って海に頭を下げる総悟。
海は下げられた頭をじっと見つめる。海が何かを言うまでずっと頭を下げているつもりなのか、頭を下げたまま総悟は動かない。
海は何も言わずその頭へと手を伸ばし優しく撫でた。
「海……さん?」
『ごめんな。俺もお前を甘やかし過ぎたみたいだ』
「そんなことありやせん!俺が海さんに甘やかされていることに気づきもしないで勝手をやってただけなんです!」
『それを黙認してた俺が悪いんだよ。だから総悟は何も悪くねぇよ』
ダメなことはダメだときちんと叱ってやるのも見守っている人間の役目。それを怠ったのは海である。
だから、ごめんなと謝る海に総悟はやっと顔を上げて訴えた。
「謝らないでくだせェ!元はと言えば俺がこんなことしなければよかったんですから」
『そんなことねぇよ。お前が煉獄関を許せないのはわかってる。お前の性格だ。あぁいう輩を放っておくほど黒くはねえってのはな。だから心配なんだよ。無理して首を突っ込んで、総悟にもしものことがあった時すぐに助けに行けないなんて悔しいだろ?だから、こういうことは事前に話してほしい』
お願いだから。と付け足すと総悟は泣きそうな顔で首を縦に振った。
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