第3幕
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「そういえば、なんでここにいるんだよ」
書類を書いていた銀時がふと思い出したように顔を上げる。じっと見つめてくるその目はしっかりと海を捉えていて、隠さずに全て話せと言われているようだった。
『拾われたんだよ。あの後』
「拾われた?誰に」
『ここの局長に』
ズタボロになっていた海を拾ってくれたのはここの局長。何も聞かずに手を差し伸べてくれた人だ。あの時代で刀を持ち、血まみれになっているやつを見かけたら普通は近寄らないはずなのに、そんな中でもあの人は笑って助けてくれた。
一人、行く宛てもなくさ迷っていた海に光を見せてくれたのだ。助けられた恩に報いるため、局長を守ろうと決意した。何があってもあの人が前に進めるようにと。
「ふーん……」
『なんだよ』
「別に。俺だって探したのに」
『は?』
「なんでもねぇ。ほら、これ書いたんだからもう出られるだろ」
紙を押し付けられるように渡され、戸惑いながらも紙を受け取る。空欄が一つもなく全て書かれているのを見てから銀時たちの釈放手続きをした。
「海」
『なんだ?』
「無事でよかった」
『……銀も、な』
「俺は大丈夫だよ。海が守ってくれたから」
『別に守った覚えは……』
「守ってくれただろ?あのままだったら俺たちは落ちてた。それを助けてくれたのはお前だよ。その代わりにお前は……」
『言うな。別に俺は後悔してない。お前たちの側から消えたことには悪いと思ってるけど……それでも』
釈放が決まりはしゃぐ子供たちを見ながらボソボソつぶやく。互いに顔を見ることなく話す俺たち。過去のことをどれだけ悔やんでも変わることは無い。ならば今をどう生きるか、未来をどう変えていくかだと思う。
それに自分が必死に伸ばした手でお前らが無事だったのであれば自分はそれで構わない、と呟くと銀時は優しげな笑みを浮かべ、海の頭をわしゃりと撫でた。
「相変わらずだな」
『何がだよ』
「相変わらず海は優しいなってな」
『優しくない。優しければもっと別のこと言えたはずだし、銀がそんなに思い悩まなくても済んだだろ』
「十分優しいよ、お前は」
『そんなこと……!』
そんなことない、と言おうとした海の言葉は銀時の顔を見た瞬間勢いを無くして消えた。あまりにも銀時が優しい顔で、柔らかく包むような笑みで海を見ていたから。反論しようとした言葉は空へと消えてしまい、ぽかんと開いたままの口からは何も出てこなかった。
「海」
『……なに』
「おかえり」
『……ただいま』
これでもかというくらいの笑顔を見せる銀時がぽつりと零した言葉に小さく返した。聞こえてるか分からないくらいの大きさの声はきちんと銀時の耳に届いていたらしく嬉しそうに笑う銀時が目に入った。
「そうだ、海。お前気をつけろよ?」
『なにを?』
「食われないように」
『食われる?何に?』
「ここのヤツらに。特にあの瞳孔開きっぱの男とか」
『土方に?』
「名前までは知らねぇけど。とりあえず気をつけろよ?」
『お、おう?』
「何かあったらすぐ俺んとこ来なさい。かぶき町で万事屋やってるから」と残して銀時は子供たちのところへと行った。気をつけろって何にだよという海の問いには何も答えず、ただ片手を上げてひらひらと振るだけ。
『なんなんだよ……』
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