第21幕
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『近藤さん』
「おお、どうした!海」
『少し頼み事があるんだが。いいか?』
「なんだ?」
近藤と二人きりの部屋で正座をして向かい合う。何か重要な話なのかと近藤の顔も普段の緩み顔ではなく、仕事の時の真剣な顔つきで海を見た。
『近藤さん、明日1日だけ休みをくれないか?』
⋆ ・⋆ ・⋆ ・⋆
「海!これ美味しいヨ!」
『んぁ?』
「なんだおめぇ、その返事は。なんですか?海は銀さん誘ってるのかな?そうなのかな?」
『黙れクソ天パ。こちとら仕事明けで眠いんだよ』
くあっと欠伸して神楽が差し出しているフォークを受け取る。刺さっているのは魚のフライのようなもの。それを口に入れてフォークを神楽へと返した。
「どう?美味しい?」と聞いてくる神楽に、美味いよ、と笑った。
「てか、お前よく休みなんか取れたな。ほとんど休みなんかねぇじゃん」
『そんなことはねぇよ。3週間に1回くらいはある』
「それどんなブラック企業!?仮にも公務員だよねェ!?んなの労働基準法違反じゃねぇか!出るとこ出したらアイツらの首が吹っ飛ぶぞおい!」
『出すわけねぇだろ。非番はきちんともらってる。俺がそれを返上してるだけだ。それに仮にもじゃなくて、ちゃんと公務員』
一週間に一回は休みがある。だが、それを返上して仕事している。近藤には休むようにと言われているのだが、副長である土方に回っている書類の量を見てしまっては、素直に休むのも申し訳ないと思ってしまう。
「休めるんだったら休めよ……」
『ちゃんと休んでる。これでも睡眠は6時間取れてる』
「そういう問題じゃねぇよ!てか、最低でも8時間は取れよ!お前早死するぞ!?」
「そういう銀さんは寝すぎですけどね。もう少し海さん見習ったらどうですか」
「銀ちゃん、凄いヨ。綺麗だよ」
「そうだな。小さな悩みなんてどうでもよくなってくるな」
窓の外を見て現実逃避する銀時。すかさずそこへ新八のツッコミが入ったのだが、銀時は意にも介さない。
窓の外は宇宙。見知らぬ星が転々としているのが見えた。
数日前、神楽が街のくじ引きで宇宙旅行を引き当てた。チケットには4人分と書いてあり、そこの1枠に海が呼ばれた次第。
近藤には事前に宇宙旅行に行ってくると伝えてあり、普段から屯所に引きこもって書類やら隊士たちの稽古やら近藤の付き添いで上層部との会合にまで引っ張りだされているのを知っていた近藤は、海の突然の休暇に嫌な顔せず、快く了承してくれた。
"いつも仕事してくれているから休みの日くらい気軽に言ってくれ。海が屯所にいてくれるのは助かるが、俺たちのわがままで海がどこにも行けないのは心苦しいからな"
そう言って苦笑いを浮かべた近藤に深々と海は頭を下げた。
休みを一日貰う代わりに、今ある書類を全て終わらせていくと一方的な約束を近藤に取り付けた。そうすれば、自分がいなかったとしても書類地獄で近藤と土方が頭を抱えることは無いだろう、と。
一日で全ての書類を終わらせるのは少し無理があったようで、今現在、海は徹夜明けの宇宙旅行となっている。
「海さん、飲み物いりますか?」
不意に新八に声をかけられ、窓からそちらへと顔を向ける。飲み物やお菓子などの詰まったカートを押している女性が、何か欲しいものはありますか?と聞いていた。
『あぁ、コーヒー貰えると嬉しい』
「コーヒーですね」
「新八、ミルクも入れといてやれ」
『おい、勝手なことすんな!』
流れるように女性からミルクと砂糖を受け取る銀時。
「なになに?海は知らない間にブラックが飲めるようになったんでちゅかー?」
新八が受け取ったコーヒーの中にミルクと砂糖を入れて、ニヤニヤしながら海へと差し出す。
『絞め殺すぞ……』
「ちょ、海さん!ここで絞め殺したらあんた現行犯逮捕だから!」
『何言ってんだよ。俺が警察だぞ?俺がルールだ』
「あんた真選組に染まりすぎだよ!!」
受け取ったコーヒーを手元のドリンクホルダーに置いて、銀時の首を掴んでブンブン振る。銀時の青ざめた顔を見た新八が慌てて止めに入るが、そんなの気にせず振り続けた。
「う、気持ち悪ッ」
『飲み込め。ここで吐くな』
「誰のせいだよ!!」
新八の悲痛な声が船の中で響いた。
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