第19幕
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『いい加減下降ろせ離せ!』
「君の部屋ここ!?」
暴れる海を担いだまま、海の部屋へとついた男は襖を開けて中へと入る。
海の部屋に散らばっている書類を踏まないように慎重に歩き、唯一何も無いスペースへと海を降ろした。
『てめぇ……こんなことしてタダで済むと思ってんじゃねぇだろうな』
部屋の隅に置いてあった刀へと手を伸ばして刀身を抜く。鞘を足元へ落として、刀の切っ先を男の喉元へと突き立てた。
「待った!!ちょ、待てって!!」
刀を向けられた男は慌てて海から離れようと後退る。その足は書類を踏んでしまい、滑って転んだ男は痛そうに腰を押さえた。
『銀……時……?』
転んだ拍子に落ちた笠。そして銀髪。
「やっと気づいたかよコノヤロー」
呆れた声で海を責める銀時。顔を覆っていた包帯を外されれば、紛れもなく銀時だった。
『なんで、ここに?』
「それは仕事……で?つか、その物騒なモンしまえ!」
ビシィ!と指さされたのは海の手にある刀。あっ、と気づいた海は鞘を拾って刀を中へと戻して元の位置へと立て掛けた。
『仕事って……"拝み屋"が?』
「そうだよ。ほら、この季節なら商売になっかなって……?」
『もう少しまともな仕事を探すとかは無かったのかよ』
「探したけど見つからなかったんですー!!」
むくれる銀時に海はため息をこぼす。そうだ、こいつはこういう性格だった。再認識したことにより、まともなことを言ってしまった自分が愚かに見えた。
『てか、なんで俺の部屋に?』
そういえば、と思い出した。憑き物がどうのこうのと言って銀時は海を担いで部屋へと来た。その憑き物とやらは一体なんなのか。大体、コイツは心霊系は苦手としてなかったか?
「お前、徹夜しただろ」
『……なんでわかんだよ』
「こんなくっきりとクマちゃんがいたら誰だって気づくだろうが」
銀時の手が海の目の下へと触れる。右手の親指で撫でるようにクマをなぞった。
『隠した、はず』
「これで隠しただ?バレバレすぎるだろうが」
クマをなぞった親指には茶色い粉がついている。それを見た銀時は「下手くそ」と鼻で笑った。
今朝方、食堂のおばさんに化粧品を借りた。ここ数日の寝不足の印を隠すために。土方と総悟には何も言われなかった。さっきすれ違った山崎にも何も言われなかったのに。なぜコイツにはバレたのか。
なぜ?と混乱している海を他所に、銀時は布団を押し入れから取り出していた。畳の上に散らばる書類を適当に集めて机の上に乗せ、海の手を引く。
「寝てないんだろ?」
この状況に頭の追いついていない海は素直に頷いた。
「いい子だから寝なさい」
着ていた隊服の上着は剥ぎ取られ、シャツの第二ボタンまでが外された。
布団の中へと押し込まれる形で寝かされたところで、海はハッと我に返った。
『寝てる暇なんか……!』
「寝ろ。今すぐ寝ろ」
じとりと見下ろしてくる目に畏怖を感じた。文句など言わせない。そう言っているようだった。
「ゆっくり休んでまた頑張ればいいだろ?」
だから今は寝なさい。そう言って銀時は海を寝かしつけるように頭を撫でた。
その手の優しさが、ずっと我慢していたはずの睡魔を呼び起こす。
「おやすみ、海」
銀時がそう言ったのを最後に、海は眠りへと落ちた。
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