第四十八幕
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「やった!うなじに当たったぞ!」
トロスト区壁上に設置された対巨人兵器。エレンの硬質化を利用して作られた丸太のようなもの。それを鎖で釣り上げ、巨人のうなじ目掛けて落す。
「損傷の度合いは悪くなさそうだ……。今度こそは……」
一度目は上手くうなじに当てられず不発。二度目の今、丸太は巨人のうなじに命中したらしく、座り込んだ巨人から蒸気が出てきた。
「やったぞ!!十二m級撃破!!」
巨人を倒せたことで喜び合うハンジたちを他所にカイは隣にいるエレンを見やる。
『エレン、大丈夫か?』
「だ、大丈夫……」
『そう言ってる割には顔色が酷いけど。ちょっと休んだ方がいい』
兵器が無事使えたことで気が抜けたのか、エレンはかくりとその場に座りこむ。今にも倒れてしまいそうな身体を支えてやると、ポタリと赤い雫がカイのズボンに落ちた。
『エレン!!』
「どうした!」
『リヴァイ!エレンが!』
ダラダラと鼻血を垂らすエレンにリヴァイは手持ちのハンカチを差し出した。
「これで拭け」
『医者に……いや、巨人化のし過ぎによる後遺症だったら医者じゃどうにもならないか。どうする?休ませたくらいで治るのか?これ』
「落ち着け、カイ。エレン、鼻血以外に不調は?」
「いえ……大丈夫です」
『無理しなくていいんだからな?今日はもう休もう』
「大丈夫だって……。それよりもっとこれを増やさねぇと」
『なに……言ってんだよ!お前、自分が今どういう状態なのか分かってんのか!?実験続きで体調崩してることも多くなったし、原因のわからない鼻血まで出してんだぞ!?そんなんであの兵器を増やせるわけないだろ!』
「何言ってんだよ!!俺のこの力を使えば、安全に巨人を殺せる!このぐらい大したことじゃねぇよ!!誰も死なずに済むなら無理でも何でもやるしかないだろ!誰も死ななくていい、俺が──」
"誰も死ななくていい"という言葉にカイはハッとする。
でも、考えるよりも先に手が出てしまった。
「カイ」
『あ……』
「お前はもう戻れ。確認は済んだだろ」
『う、ん……』
振り上げた右手はリヴァイによって止められ、エレンの顔に当たることは無かった。エレンの怯えた顔を見て正気に戻り、呆然としながらその場を離れる。
「あ、カイ……!」
エレンに呼ばれるも振り返ることなく下へと降りた。
『リヴァイが止めてくれなかったら……あのまま叩いてたのか』
カッとなった勢いで手を振り上げてしまった。こんなことは初めてだ。今までエレンを殴ろうだなんて思ったことないのに。
『ダメだ。暫くエレンと顔を合わせない方がいい』
リヴァイの言う通り、エレンを構いすぎてしまった。そのせいで自分の言うことなら聞いてくれると思い込んでいたのだろう。
このままではダメだ。
エレンを傷つけてしまう前に距離を置かなくては。
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