第四十七幕
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「カイ兄ちゃん!かくれんぼしよう?」
『かくれんぼ?いいけど……隠れられる場所あるか?ここ』
「いっぱいあるよ!」
子どもらに手を引かれて建物の裏へと連れていかれる。ここで三十秒数えて!と言った途端、子どもたちは蜘蛛の子を散らすように四方八方へ走っていった。
『エレンは隠れなくていいのか?』
「えっ、俺も隠れるほうなの?」
『え?違うの?てっきりそうだと思ってたんだけど』
かくれんぼをしようと声をかけられたのはカイだけではなく、孤児院に居た104期生も巻き込まれた。ヒストリアはまだやる事があると言って辞退したため、他の者たちが強制参加。
ジャンとコニーが疲れた顔をしていたが、隠れる側になって休んでいればいいと言ったら、二人はそれならと渋々付き合ってくれた。
子ども六人と兵士六人。計十二人を一人で探し出せるのかと心配していたところで、エレンがぽつんと残ったものだから期待してしまった。
『なんだ?エレンも探す方やってくれるのか?』
「別にいいけど……」
『そ?じゃあ手伝ってもらおうかな。まあ、隠れる方になってもいいけど、どうせすぐ見つかるしな』
「それはガキの頃のことだろ!?」
『今でもそんな変わらないと思うけど』
よくエレンにかくれんぼをしようと声をかけられたことがある。その度にいつもカイは探す側で、エレンは隠れる側なのだが、これがまた早々に決着がついてしまう。
エレンは隠れるのが下手、と言うよりも我慢が出来なさすぎる。鬼に見つからないように身を隠さなければいけないのに、エレンは毎回顔を出してしまうのだ。
早く見つけて欲しいと言わんばかりにエレンは物陰からひょこりと顔を出す。その度に声をかけては、本気で悔しそうな顔をするもんだから、こちらはどうすればいいのか分からない。
わざと見つけていないフリをしても、エレンはずっとカイを見続けてくるし、見つけられなかった降参、と諦めると本気出せよ!と怒られる。
『あれから何年も経ってるんだから流石にあの癖はもう直ってるか』
「なんだよ癖って」
『なんでもない。エレン、探す側は俺一人でやるからお前も隠れておいで』
「え、でも……」
『大丈夫。見つけ出すから』
「あ……」
『ほら、早く』
「わ、わかった……」
パタパタと走っていくエレンの背中をじっと見つめる。
姿が見えなくなったあと、カイは思いため息を吐いて頭を片手で抱えた。
『難し……無理だろ。優しくしないって』
リヴァイに言われていたことだ。エレンに余り構いすぎるなと。エレンに告白されて断っているのであれば、変に期待を持たせるようなことはするなと注意された。
それはカイも思っていたことで、エレンとの関係を考えていた。でも、突き放すなんてことは出来ない。もうこれは身に染み付いてしまっている事だ。エレンが赤ん坊の頃から、気にかけて甘やかしてきた。
それに表情を見れば、エレンが何を思ってるのかなんとなく分かってしまう。
先程だってそうだ。ヒストリアとなにやら話していると思ったら突然顔が曇った。何故かヒストリアを責めるような目をして。
ああ、あれは拗ねている。あのままでは余計なことまで言ってしまうだろう。だからエレンの元に子供を派遣した。エレンの意識が違う方へ向くように。
忘れていた礼を伝え、今日はもう休ませようとしたら泣き出すもんだからビックリした。あんなに泣いてるのを見るのは久しぶりだ。
『なんであんなに泣いたんだか。別になんも悪くないのに』
地下街でのことを引きずっているのはわかる。あれからエレンはカイのことを避けていたから。あの時のことを自分のせいだと思っているのだろうか。
『はあ……リヴァイ、ごめん。これはまだ暫く無理そうだ』
まだまだ手のかかる子。気をつけて見てないと。
『さて、探しに行くか』
考え事をしていたら三十秒以上経ってしまった。早く探しに行かないと子どもたちがぶすくれてしまう。
とりあえず適当に近場から探してみるか、と孤児院の裏手に置いてあった空樽の蓋をパカッと開ける。
『……エレン』
「あっ」
『お前もう少し頭使えないのか』
「か、隠れてるんだからいいだろ!?」
『いやまあ、そうだけども。なんかもうちょっと捻りをさぁ』
「ひねりってなんだよ!」
『顔出してなかっただけ良しとするか。うん』
まさか一番最初にエレンを見つけるとは思わなかった。これだけ人数が居るのだから、エレンもそれなりに見つかりづらくなるだろうと思っていたのに。
『相変わらずお前は可愛いな』
「可愛くねえよ!!か、可愛いのはおまっ……ああクソ!!」
『何怒ってんだよ。怖……』
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