第四十五幕
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~Levi~
「うん?ああ、帰ってきたか。視察の方は無事に済んだの──」
「エルヴィン!!医者を呼べ!!」
本部の入口に居たエルヴィンに出迎えられるなりそう叫んだ。リヴァイの腕に抱えられているカイを見たエルヴィンはすぐさま医者を呼びに本部の中へと入っていく。その後をリヴァイは追いかけた。
「何があったんだ」
「盗賊団のやつらに目をつけられやがった。そいつらに襲われたんだろう」
地下街に入った時に違和感があった。下と上を繋いでいる道にはいつも通行料をせびるやつらがいた。リヴァイが上に来てからはそいつらがどうなったのかは知らない。だが、あれで生計を立てている連中だったから今でも同じことをしているはず。
そんなやつらがどこにもいなかった。最初は憲兵のやつらに追い払われたのかと思ったが、中に入ってからその理由を知った。
何も知らなかったカイ達はそこを無理矢理通って来てしまったのだ。そのせいで追われる身となってしまった。
「騒ぎを起こしたおかげですぐに見つけられたがな」
連れて行ったミカサたちを散開させてカイたちを探そうと思ったがその手間が省けた。地下街で名を馳せていた盗賊団に目をつけられたのだろう。街中で二人組の兵士を探せと男たちが吠えているのが聞こえたから。
その声を追っていけばなんてことはない。すぐにカイとエレンの姿を見つけることが出来た。
「ふむ。私たちが行った時よりも酷くなっているようだな」
「そりゃそうだろうよ。あの頃は俺がある程度潰してたからな」
「代替わりのせいか」
「頭の悪い連中しかいねぇから仕方ない」
兵士を狙えばどうなるか分かっていない奴らが多い。それについては自分も同じだった。地下街にいた時にそこら辺をフラフラしていた兵士から立体機動装置を盗んだのだから。よくあの時、報復を受けなかったものだ。運が良かったとしか言いようがない。
カイに手を出した連中も返り討ちにあったのだろう。地面に寝転がっているのが数人いたから。
きっとそいつらを倒してしまえば片付くとカイは思ったのだろう。まさか他の連中が身を隠していたとも知らずに。
『う……』
「カイ」
『あ、れ……』
「目が覚めたか?」
ゆるりと開けられる瞼。ぼうっとした目でカイはリヴァイを見た。
「部屋まで大人しくしてろ」
『ここは?』
「本部だ。上に戻ってきた」
『上……。リヴァイ、エレンは?』
「お前はエレンのことしか頭にねぇのか。あいつもこっちに戻ってきてる。怪我はしてねぇよ」
リヴァイの言葉にカイはホッとした表情。そんな顔にふつふつと苛立ちが湧く。
『良かった……。俺が、つれていっちゃったから』
「あいつが自分でついて行くと言ったんだろうが。無事に連れ戻せと言ったのに」
『ぶじ、』
「お前らが地下街に行くのは知ってた。いや、カイ。お前エレンたちと話してた時後ろに居ただろう」
ヒストリアから一発もらった時にカイは後ろにいた。こちらに来るだろうと思っていたから声をかけずに待っていたのに、何故かカイは静かにその場を去っていってしまった。カイの存在に気づいていたのはリヴァイだけじゃなく、エレンも気づいていた。だからあいつは一人集団から抜けようとしていたのだ。
『しって、たの』
「ああ」
『なんだ……ならこえかければ……よかった』
「なんでしなかった」
『だってじゃま、したく、なかったから』
寂しげにカイはリヴァイのマントを掴む。
『リヴァイさん、わらってたでしょ?わらえるほどあんしんしてた。そんなひとに……はなせない』
カイの言葉にリヴァイはピタリと足を止める。エルヴィンは一度こちらを見てから先に歩いて行った。
「だからなんだ。笑ってたから話せなかっただ?ふさけんじゃねぇ。そんなクソみてぇな理由でお前は怪我したのか?」
『……ごめんなさい』
「それなら二度と笑わねぇよ」
カイが頼れなかった理由が自分にあると言うなら。それならもうやらない。そう言い放つと、カイはマントを強く引っ張る。
『違う!そうじゃない!俺が勝手にそう思っただけであってリヴァイさんが悪いわけじゃない!』
「現に頼れなかったんだろうが」
『それは……』
「地下街に詳しい人間ではなく、あのクソガキを頼った。お前には俺が頼りなく見えた。違うか?」
『違う。違うんだよ……』
「何が違うんだ」
違う違うと繰り返すカイに舌打ちが出そうになるのを抑えてカイの次の言葉を待つ。
『迷惑……ううん。リヴァイさんの気分が悪くなるような事はしたくなかった。今、笑えるほど穏やかな状態なのに、そんな時に面倒事を頼みたくなくて。貴方の顔が曇るのを見たくなかった』
「は……」
『笑っていてほしかった。でも、エレンたちの前で笑ってるのが……』
そこで言葉が切れる。でもカイがなにを言いたいのかは分かった。
「少しは分かったか?俺はそれを毎日感じてんだよ」
『ごめん』
「カイ、確か話があるって言ってたな」
『……言った』
「今言え」
こんな場所で、この状況で聞くのもどうかと思うが、どうせ答えは分かりきっている事だ。いつ聞いたとしても良いだろう。
『こ、こで?』
「こっちから聞き出さなきゃお前はいつまで経っても話さねぇだろ」
口ごもるカイをじとりと睨めば、観念したように口を開いた。
『……き、です』
「あ?はっきり言え聞こえねぇよ」
『だから好きです!!』
「知ってる」
『は……?』
「言わねえだけでお前はずっと前からそう思ってただろうが」
『なん、は?え?』
「好きでもないやつとキス出来んのかお前は」
『出来ないけど……』
「それが答えだ」
そう言ってリヴァイは歩き出す。腕の中でぽかんとしているカイにため息を吐いて。
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