第二十六幕
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『穴が無い……ねぇ?』
ウトガルド城から壁の上へと引き上げたカイたちは駐屯兵団のハンネスから報告を受けた。
それはローゼの壁に異常は見当たらないというもの。
「カイ、どう思う?」
『どうもこうもなぁ。調べてもらった結果そうなったんだからそうなんだろ』
壁に穴が無いと言うならどこからあの巨人たちが来たのか。
「ねえ、カイ」
『なに』
「いつだったか話したことがあったよね」
『……なんのことやら』
「忘れたくなるのもわかるよ。でも、多分あの仮説はあっていたんじゃないかい?」
『ハンジ』
「私は話すべきだと思うよ」
『あれはあくまで仮定の話だ。確実な証拠もない。俺たちの想像の産物だということも捨てきれないだろ』
「それならそれでいいさ。私たちが酷い妄想に囚われていたというだけで済む。でも、これが事実だったら」
事実だったらなんだって言うんだ。
こんなことを話してしまったら。
『ハンジ、ダメだ。黙ってろ』
「もうこれは隠しようがないよ。エルヴィンに報告するべきだ」
『やめろ。あのクソハゲの耳になんか入ったら……確実に知られる』
「庇いたくなるのは分かる。でも……それはもう難しいんだ。こうなった以上は」
巨人の元は人間だった。
そんなこと話せるものか。そんな話が耳に入ったら。彼は絶対傷つく。
『頼むから……黙っててくれ』
「私だって言いたくは無いよ!でも仕方ないじゃないか!」
『言いたくないなら黙ってろって言ってんだよ!巨人は壁の下から侵入した!それでいいだろ!?』
「そんな嘘が通用すると思ってるのかい!?」
『ああ、通用させるさ!!それであいつが守れるなら……傷ついた顔を見なくて済むならいくらでも嘘なんかついてやる!!』
怒鳴り合うカイとハンジの横でモブリットが困惑した表情で立ち竦んでいた。彼の表情を見たカイたちはいたたまれない気分で顔を逸らす。
「きっと、私たちが話さなくても気づくよ。その時はどうするつもりなんだ」
そんなの考えていない。ずっと知らないままでいさせるつもりだったから。
『知らねぇよ……』
「そんなの……あまりにも卑怯じゃないか」
『卑怯でもなんでも構わない。俺は……リヴァイに人殺しなんて業を背負わせたくない』
意識の無い人間を今まで殺し続けていたなんて隠し通さなくては。この先ずっと知らないままで。巨人は人類の敵だと思わせたままでいい。
「リヴァイもあんたに対して過保護だと思っていたけど、貴方も大概だね。いや、カイの方がよっぽど重症だよ」
『好きに言ってろ』
「まったく。こっちが冷や冷やするじゃないか」
やれやれと首を振るハンジにカイはため息を零す。
『冷えたのならいいだろ。いつも暑苦しいんだから』
「酷い言い草だね。私は常に真剣なだけだよ」
『って言ってるけどどうよ。俺には頭のネジが数本飛んでってるようにしか見えないんだけど』
「えっ、まあ……数十本くらいは……」
戸惑いながらもモブリットは素直に呟く。
「ちょっと!酷くないか!?」
『部下にも言われてやんの』
殺伐とした空気はどこへやら。頭のネジの有無でケラケラと笑っていた時、アルミンに声をかけられた。
「カイさん……!ライナーたちが……」
その言葉に緊張が走る。
『五体満足の方がいいか?』
「出来るならね。でも、抵抗するのであればやむを得ない。喋れる口だけあればいいよ」
『了解』
ライナーとベルトルトに飛び掛ったミカサに合わせ、カイもエレンの元にアンカーを突き刺す。
『エレン!』
「カイッ!」
ライナーとエレンの間に入り込んだ瞬間、バチッという音と共に辺りが眩しくなった。
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