第三十九幕
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『そいつは?』
「中央憲兵だ」
無事に戻ってきたリヴァイはズルズルと男を引きずってきていた。
『追っ手は来そうか?』
「いや、来れないだろう。全員身動き取れないようにしてきた」
『そ。じゃあこいつからエレンたちの居場所を聞き出せば良いってことか』
連れてこられた男は血を吐き出しながらリヴァイを睨む。その目がカイへと向けられた時、男は一瞬虚をつかれたかのような顔をした。
「お前は……なぜ生きている」
『は?』
「貴様は処分されたはずだ!」
『あ、なるほど。関係者か』
どうやらこの男はロルフの拷問に立ち会っていた人物らしい。カイの記憶にこの男の姿は無いが、相手はカイの事を知っている。
「クソッ!あいつ虚偽報告をしたのか!」
忌々しげに吐く男にリヴァイは足を振り上げる。
「ぐっ……」
「おい。その話は後だ。今はエレンとヒストリアの居場所を吐け」
「無駄だ。無駄なんだよ……お前らが何をやったって。調査兵……お前らに出来ることはこの壁の中を逃げ回ってせいぜいドロクソにまみれてセコセコ生き延びることだけだ!それも仲間を見捨ててな!お前らが出頭しなければ囚われた調査兵は処刑される!!お前らがやったことを考えれば世間も納得する当然の報いだ!最初は調査兵団最高責任者であるエルヴィン・スミスからだろう」
エルヴィンの名前が飛び出てきてカイはピクリと反応した。
「ただしお前らが独断でやったことだと、その首を差し出すのなら他の団員の命だけは何とか助かるだろうがな」
男の視線がリヴァイからカイへと移ったかと思えば、にやりと不気味な笑みを浮かべた。
「そこにいる奴を差し出せ。そうすれば中央憲兵はお前らを追うことはしないだろう。以前、クラウンに仲間を殺されて憎しみを抱いている奴らがいる。そいつらに明け渡せば満足する」
『俺一人の命で調査兵全員が助かるとは思えないんだけどなぁ……』
「却下だ」
「そんなこと許さない」
『この間からなんなのお前らは』
リヴァイは男の顔面を蹴り飛ばし、ミカサは刃を首に突きつける。カイの前にジャンが庇うように立ち、後ろからはコニーとサシャに引っ張られていた。
「だ、ダメですよ!カイさんは渡せません!この人はご飯を譲ってくれる人なんです」
「ダメに決まってるじゃないっすか!カイさん居なくなったら誰が班の盛り上げ役やるんすか!」
『餌付けした覚えも盛り上げ役を買ってでた記憶もないんだけど。ジャンくんこれどういうこと?』
「そいつらの言葉は聞かなくて良いんで」
『そう?じゃあなんで君は俺の前に?』
「恩人ですから。クラウンさんは」
『待て待て。それこそ記憶にない』
「貴方が居なければ俺たちはトロスト区で死んでました。俺たちの命の恩人ですよ」
「だそうだ。悪いがこいつの命はこいつだけの物じゃねぇ」
そんなリヴァイたちを男は嘲るように鼻で笑い飛ばす。
「はっ!こんなやつの命がそんなに大事か!他の仲間の命よりも、憲兵を殺し回っていたやつの命が!」
「それがどうした。憲兵なら俺も殺してる。こいつだけが手を汚したわけじゃねぇよ」
「それならお前ら二人が出頭すればいい!そうすれば他の団員たちは俺が口添えしてやる」
『それはいただけないな』
サシャとコニーの手を離し、ジャンの肩を引いて下がらせる。男の前にしゃがんで目線を合わせてにこりと笑った。
『リヴァイさんの首を出せって?俺だけならまだしもこの人も?エルヴィン団長が真っ先に殺されるって?そうか……それなら仕方ないですね』
「な、何がだ……」
『俺思うんですよ。憲兵って……"要らない"なって』
「は……?」
『だから憲兵って必要ないと思うんです。壁の中でぬくぬくと生きている怠惰な生き物じゃないですか。憲兵が居なくなったところで困りはしない。なんなら一から組み直せばいいと思うんだ』
「何を言って……」
『三日……いや、一日二日あれば足りるかな』
「カイ、」
『リヴァイさん、俺班から離れてもいいですか?エルヴィン団長が処刑台に立たされる前に……憲兵を全員殺してきますので』
怒りを通り越して笑みがこぼれる。こいつらは根絶やしにしなくては。その為には班を離れて単独行動となる。エレンとヒストリアはリヴァイたちに任せればなんとかなるだろう。
その間に自分が他の調査兵たちを助けに行けばいい。
囚われているエルヴィンも救出して。
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