第二十六幕
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ウトガルド城へと近づいてきた頃には空は白け始め、城の周りがとんでもない事になっているのが見えてきた。
「カイ!先に飛んで見てきてくれるかい!?」
『了解!エレン、アデラインを頼む!』
「あ、わ、わかった!」
アデラインにエレンについていけと声をかけ、立体機動へと移る。カイの後ろからミカサも飛んできたのが見え頷き合う。
「カイ!あそこ!」
『低身長で金髪の可愛い子……だっけか!』
仲間たちから一人走り出した金髪の少女。何故か巨人たちが群がっている方へと走っていっているものだから冷や汗が垂れる。
『待て待て!なんで自分から近づいていくかなぁ?』
慌てて引き留めようと速度を上げた時、少女の前に巨人が顔を出した。
『ミカサ!』
「わかった!」
素早く彼女の元へと近づいて抱き上げる。巨人から離れた後、ミカサが項を削いだ。
「えっ……」
『怪我はないか?』
「だ、大丈夫です」
『そりゃ良かった。装備も無いのに巨人に近寄るなんて自殺行為だ。次からはやめるように』
「す、すみません……」
ああ、確かに可愛らしい。怒られてしょぼんとしている姿は子猫のようだ。
『でもなんであんなにアイツらは一箇所に群がってるんだ。あそこには何があるんだ?』
「あそこに……私の……!」
少女は群がっている巨人たちの方へと必死に手を伸ばす。
『まさか……冗談だろ……』
「お願いです!助けてください!ユミルが……ユミルが私たちのために戦ってくれたんです!」
マントをグイッと引っ張られ、どうかお願いしますと懇願される。
『……わかった』
あれだけ貪られていたら無事だという保証は無い。周りにいるのは通常個体なのだから。項にいる人間の事など気にもしないだろう。
『エレン!』
「カイ!あっ、クリスタも無事だった……んだな」
安堵の表情から一転、エレンはカイの腕の中にいる少女を見て顔をしかめたのが見えた。
エレンの元に降り立ち、クリスタをゆっくりと下ろす。
「エレンも来てくれたんだ!」
「あ、ああ……」
『エレン、この子のこと頼む。俺は向こうを片付けてくるから』
「それなら俺も!」
『お前は戦わなくていいってハンジに言われただろ。さっき見てたからな?勝手な行動は慎め』
「さっき、見て……た?」
『上官の命令は素直に従うこと。いいな?』
「わ、わかった……」
ずん、と落ち込むエレンにクリスタがあわあわと狼狽える。どう励ましたらいいのかと困っている様子にカイは思わず吹き出してしまった。
『無理に励まさなくていいよ。むしろ叱ってやって。無茶なことしやがってって』
「えっ、でも助けに来てくれたから」
『それでもだ。一歩間違えれば巨人に食われてたかもしれない。エレンの行動で他の兵士が危険な目に合うことも……あるから。だから身勝手な考えはやめるように』
「ごめん……」
『反省してるならいい。リヴァイには黙っといてやるから』
こくりと頭が動き、ちゃんと分かってくれたかと安心する。
『その格好じゃ寒いだろ。これ羽織ってな』
マントをクリスタの肩に掛け、二人に背を向ける。
『まあ、なんだ。初討伐おめでとう、エレン』
巨人化しているときにいくつもの巨人を倒しているので初討伐というのもなんだかおかしいが、エレンが自力で立体機動を使って巨人を倒したのは初めてのこと。今までの訓練の成果をここで発揮出来たというのであれば褒めるべきだろう。
「あっ……!」
俯いていた顔がバッと勢いよく持ち上がる。とても嬉しそうに笑っているのを見てしまい、カイはやってしまったと反省。
『(やっべ。これ吹っ切れるも何もねぇわ)』
今後甘やかすのは止めようと誓った。
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