第三十八幕
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『エレンって食用だったんだ?』
「馬鹿なこと言ってんじゃねぇ」
エレンが拉致される前にハンジに渡していた紙にはユミルとベルトルトの会話が書かれていた。
そこからハンジの推測の元、巨人は巨人化の能力を有しているものを捕食すると人間に戻れるという仮説。
ユミルが巨人化の能力を持っていたのがその理由。
『ところで、いつ聞いたの』
「何をだ」
ハンジがミカサ達に説明しているのを少し離れたところで見守りつつ、カイは隣に立っているリヴァイに投げかける。
『巨人の正体が人間だって』
「お前を鎧共から救出したあとだ」
『バカハンジ。言うなって言ったのに』
話すべきではないと言ってからすぐにハンジはリヴァイに言ってしまったのか。いつまでも隠し通せるものではないにしろ言うのが早すぎる。
「どうやらお前が最初に気づいたらしいな」
『ぐっ……それも聞いたのかよ』
「ああ。なんですぐに言わなかった」
『言えるわけないだろこんなこと。俺だって信じたくなかったんだから』
巨人の正体が人間だったなんて今でも信じたくない。出来れば知らずに過ごしたかった。
だがこうなってしまった以上は仕方ない。ユミルとベルトルトの会話でまた一歩、この仮説が確実なものになってしまったのだから。
「人のことを心配してる暇があるなら自分の心配をしろ。お前はすぐに変なことに巻き込まれるだろうが」
『その説教はもう聞き飽きた。つか、人の心配って?』
「……なんでもない」
『なんだよ。リヴァイの心配なんか……あ?え?』
巨人の正体からのリヴァイの心配で以前、ハンジに言ったことを思い出した。
そうだ確かにあの時はリヴァイの心配をした。今まで人を殺していたんじゃないかとショックを受けるだろうと。
『待て待て待て!リヴァイ、ハンジにどこまで聞いた!?いや聞かされた!?』
「何も聞いてねぇよ」
『聞いてるだろ!絶対聞いてるだろ!じゃなきゃそんな言葉でない!』
リヴァイの両肩を掴んで揺さぶる。何を聞いたんだと問い詰めるも、リヴァイはグラグラと揺さぶられているだけで何も言わない。
『リヴァイさん!言ってください!!何を聞いたんですか!!』
「おい、その話し方はやめろ。居るだろうが」
『今そんなのどうでもいいです!ハンジさんから何聞いたんですか!!!』
「動揺しすぎだろう」
『早く!!場合によってはハンジさん消さなきゃいけないんですから!!!!』
「ちょっとちょっと、なんなの?私を消すってどういうこと?」
ギャーギャー騒いでいればハンジや他の者もビックリするわけで、いつの間にかその場にいた面々の視線を集めてしまっていた。
『あ、いや、これは……!』
「てか懐かしいねぇ。その呼び方。ねぇ、もう一回呼んでよ!」
『絶対やだ』
「今、クラウンさんハンジ分隊長とリヴァイ兵長のことさん付けで呼んでた……よな?」
「私も聞きました。いつも呼び捨てですよね?あの人」
こそこそと104期が話しているのが聞こえ、カイはビシッとそちらへと指を差す。
『そこ!!ヒソヒソ話してんじゃねぇ!!エレンとヒストリアの奪還作戦でも考えてろ!!』
ビクゥ!と肩を揺らしてジャンたちは一斉にカイから目を逸らす。だが、依然としてこそこそ何かを話しているらしく、ちらちらと時折こっちを見ていた。
『最悪だ……なんなんだよ……』
「最悪なのはどっちだ。言っただろうが、話し方には気をつけろと」
『だったら正直に話してくれよ……』
「"傷ついた顔を見たくない"だってな」
『誰か殺してくれ……今すぐに……』
なんだこの拷問は。サネスに必要以上に手を加えたせいか。今その過ちが自分に返ってきているとでも言いたいのか。
頭を抱えて蹲って呻いていると、頭上からリヴァイの声が聞こえてきた。
「カイ、てめえだけがそれを思ってるわけじゃない」
『……え──』
きょとんとしながらリヴァイを見上げたが、リヴァイはハンジの方へと顔を向ける。
「ハンジ、話を戻せ」
「はいはい。これから私たちは──」
話はエレンとヒストリアの救出へと戻る。その中でただ一人、カイはわけが分からないという顔を浮かべていた。
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