第二十六幕
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『ウトガルド城?』
「ああ、南西の壁近くにある古城だ。そこの塔からなら壁が見渡せる」
『なるほど……』
ウォール・ローゼに巨人が出現したという報告を受けてから新たな伝令は来ていない。この場合、ミケたちは部隊を分けて行動するはず。壁の穴を見つけ次第報告してくるのにそれがないということは、部隊が壊滅した恐れが高い。
『この闇夜じゃ穴を見つけるのも一苦労だろうに』
夜間は巨人の動きが鈍くなる。とはいえ、鉢合わせるようなことが起きたらタダでは済まない。巨人との戦闘が繰り返されれば疲弊も溜まり、ガスや刃も消耗してしまう。補給ができない以上、装備品の温存は必須。
合流出来るのであれば早めに行かなければ。
『ハンジ、ミケたちの部隊はまだ生きてると思うか?』
「どうだろうね。生きていて欲しいとは思うけど」
『やっぱ難しいか』
「連絡が全く無いんだ。もしかしたらもう……」
生きている可能性は低い。そうなれば率いている104期の兵士達も危うい。そちらに至っては装備品を持たせていないのだから。
前を走っているエレンの背中へと目を向ける。女型の巨人だったアニ・レオンハートの時もショックを受けていたのだ。仲間である104期兵士たちが巨人に食われたとなったら。
『……ハンジ、急ぐぞ』
「うん?うん、そうだね」
自分が過去に体験した絶望をエレンにも感じさせないように。できる限りの事はしなくては。
「そういえばカイ、あなたエレンとも何かあったの?」
『えっ、え?何が??』
唐突な質問に声が裏返る。
「だってさっきからエレンのことを避けてるじゃないか。エレンもなんだかカイに近寄り難いって顔してるし」
『さ、さあ……?俺には分からないけど』
「ふーん?なんだ。喧嘩でもしたのかと思った」
『喧嘩はしてない』
「喧嘩"は"ね。あっそう。そういうこと」
今の言葉で何を察したんだ。ハンジはまたもや気持ち悪い笑みを浮かべながらカイとエレンを交互に見る。
「モテる人間は辛いねぇ」
『は……?』
「そっかぁ。リヴァイとエレンかぁ。大変だねぇ?」
『何言ってんだよ……なんでそこにリヴァイも出てくんだよ!』
「だってそうだろう?あれだけ仲良かったのに急によそよそしくなるなんて。そういうもんだろう?ねえ、どこまでいったの?エレンに告白されたの?」
『ハンジ、ちょっともう黙れ』
「えー、いいじゃないか。ウトガルドまで距離あるし。君と私の仲だろう?」
『どんな仲だよ。もうその話は終わり。前見て走れよ』
「つまんないなぁ。こういうのは聞いてる側が一番楽しいんだからね?」
そりゃ聞いてるだけだから楽しいだろう。当事者は胃がキリキリしているというのに。
エレンと距離を置きたいのに側にいて守らなければならない。これではエレンの心中は穏やかではないだろう。
そこでふと疑問が湧く。この事は誰にも話していないというのに何故ハンジが知っているんだ。
『ハンジ……お前なんで知ってるんだ』
「え?そりゃ見てれば分かるよ。リヴァイもエレンもあからさまだもん」
『は……?』
「え?だって二人ともカイのこと大好きじゃん」
ガツン、と頭を殴られたかのような衝撃に目眩を感じた。
「どっちとくっつくのかなぁってナナバと話してたんだよねぇ」
『ナナバって……ミケの部隊の人か』
「そうそう。あっちはエレンとくっつくだろうって。私はリヴァイと付き合うと思ってるから」
『おい……なんつう話してんだよ……』
人の知らないところでそんな話が繰り広げられていたとは。
「ふふ。まあ、どちらでもいいと思うよ。私は貴方が幸せになってくれるなら。貴方を幸せにしてくれる人ならリヴァイでもエレンでも」
そう言ってハンジは柔らかな笑みを浮かべた。
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