第二十五幕
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「カイ、出られそうかい?」
『問題ない。ヤバくなったらちゃんと引くから』
「うん。ヤバくなる前に引いて欲しいんだけど」
最終確認としてハンジが装備品のチェックを行う。信煙弾の確認をしていた時に予備のガス缶があるのに気づいて不思議そうに首を傾げていたが、その意味がすぐに分かったのかニヤニヤと気色悪い笑みを浮かべた。
「ふふ……愛されてるねぇ」
『やめろ。次、リヴァイがこれをアデラインに積んでたら止めてくれ』
「なんで?いいじゃん。心配されてるんだよ」
『要らない心配だから言ってんだよ』
「え?どうして?」
『それは……』
「あー、なるほど。そっかそっか。ふーん?」
目を逸らしたカイにハンジは何かを察したらしく頷く。
「ねぇ、カイ。私は別に気にしなくていいと思うよ」
『……何が』
「"それは"貴方だけが背負ってることじゃないからだよ。カイだけが気にして生きていくようなことじゃない」
胸の内を見透かされた気がしてぞわりと鳥肌が立つ。
「だから素直になったらどうだい?」
『お、れは……』
「分かっているんだろう?君もリヴァイのことを──」
『ハンジ!!!』
カイの叫びでザワついていた周囲がしん、と静かになる。
『頼むから……』
「そう。まだ認めたくないんだね。でも、いつかはその気持ちと向き合う日が来る。その時は誤魔化したりせずにちゃんと素直になるんだよ?」
優しく諭すように言われて頷く。そのいつかが来ない日を願って。
「おい、なんの騒ぎだ」
カイの声を聞いたのか、リヴァイが司祭を連れて戻ってきた。ハンジのことを睨むように見ている。
「ああ、戻ってきたんだね。どうだった?」
「どうもこうもねぇよ」
避難している住人たちを司祭に見せるのだとリヴァイは司祭を連れて行った。
ハンジが司祭に心変わりはしたのかと聞いている間にカイは持っていた上着をリヴァイに突き出す。
『返す。もう気にしなくていいから』
「別に可哀想だとか思って掛けたんじゃねぇ。これから巨人どもを殺しに行くのに風邪をひかれたら厄介だから貸してやっただけだ」
『あっそ。それなら着いた時点で起こせばよかっただろ』
「声をかけても起きないくらい寝こけてた奴が良く言う」
互いに顔を見ずにぶつくさと文句を垂れ流す。視線の先ではハンジが司祭に怒りをぶつけている。
「わかっているとは思うが、エレンを無事に戻せ。あいつに死なれたら面倒だ」
『分かってると思うなら一々言わなくて良くないか?』
「作戦の確認は必須事項だ。後々になって聞いていませんでしたじゃシャレにならねぇ」
『はいはい。分かりました』
これ以上話をしたくない。
ハンジたちの方も話がついたのか、104期の兵士の一人を連れてこいという流れになっている。
「カイ」
『なんだよ。小言ならもう受け取らないからな』
「必ず戻れ」
『何度言えばわかるんだよ。ちゃんとエレンは無事に連れて帰るって言ってんだろ』
「エレンの事じゃない。お前のことだ」
ドキッと心臓が強く跳ねる。そして鼓動が徐々に早く強くなっていく。
『あ、たり前だろ……エレン連れて帰らなきゃいけないん……だから』
「俺の知らないところで死ぬな。必ず生きて戻ってこい。お前が帰る場所は
『は、はあ?いや、帰る場所って……そんな家みたいなこと……』
帰らせてくれる。側にいていい。
『バッカじゃねぇの?誰が……誰がお前のとこなんかにッ』
「好きにしろ。だが、死ぬことだけは許さねぇからな」
そう言ってリヴァイは上着を羽織ってハンジの所へと歩き出す。
『もうやだ……どうしろっていうんだよ……』
散々人の心を掻き乱して放置していくのだから嫌になる。
これから出るって言うのに。
『動揺させるバカがどこにいんだよ……』
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