第二十七幕
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「貴方は……どこまで知ってるんですか」
『さあ?どこまでだろうな?』
ライナーとベルトルトから探るような目を向けられ、カイは緩やかな笑みを浮かべた。
彼らの言う故郷が壁内のことでは無いことは容易に想像出来る。でもそれがどこなのかは分からない。壁外のどこかに。調査兵団が行ったことの無い場所に同じような住処があるのかもしれない。
人類の住処なのか、はたまた巨人化の能力を持った集団が住む場所があるのか。
「カイさん、あんたは俺たちの何を知ってるんだ」
『何って……何が?』
「ライナー!はったりだ!俺たちのことを知ってる人間がいるわけがない!」
壁内に二人のことを知っている人間はいない。これで壁外出身だということが確実になった。やはりあの人の考えはあっていたんだ。
随分と前に聞いた話を思い出して密かに口元を緩ませる。
『ふむ。まさか壁外に他の人類が本当にいたとはね。まあ、こちら側から探しに行くなんてことは出来ないからな。君たちもよくここまで来れたものだ。大変だったろ?』
「ライナー!!」
「あんたたちが知るわけが無い」
『そう……。俺たちが"知ることの出来る範囲"には居ないってことな』
馬で行ける距離なのか、それとも巨人化して移動しないとダメなのか。詳しいことまではわからない。でも、今はこれだけ分かれば良いだろう。
『(壁外に他の人類がいる。そいつら全員が巨人化の能力を持ってるかは不明。でも、ライナーたちが巨人化出来てるってことは、その能力を引き出す何かがあるのか、それとも後天性のものか)』
「ライナー……ダメだ。この人は生かしておいたら後々面倒になる」
考え込んでいたらベルトルトがそんなことを言い出した。これは少しつつきすぎたかと後悔。
「そうだな。今、俺たちのことがバレるのはマズイ」
「このまま下に落とした方がいい!」
「お、おい!お前ら一体何の話を……」
二人の会話に危機感を覚えたエレンが青ざめた顔で叫ぶ。
「カイさん、貴方がどこまで知ってるのかは知らないが……このまま生かしておくことは出来ない」
『そりゃ残念。だが、やるなら早くやらないとお前たちも危ないぞ?』
「何を──」
ぱすん!という音が響き渡る。空に打上げられる緑の煙弾。
『早かったな。さすがクソハゲ。そういう決断は早くて助かる』
馬をこちら側にまわすのに大変だったはずだ。リフトを移動させるのにそれなりの時間が掛かる。最速でやったとしても、エルヴィンだけの指示ではこんなに早くは動かせない。
『憲兵と駐屯に応援要請したのか?』
ウォール・シーナ内で巨人との戦闘があった後だ。駐屯兵団も憲兵団も警戒態勢をとっていた。次なる巨人との戦いのために。だからいつでも動けるようになっていたとはいえ、あれほど馬鹿にしていた調査兵団にすんなり手を貸すだろうか。
『壁の中に巨人がいるってことが分からなかったら……こうはならなかったかな』
巨人が身近にいたという事実が他の兵団の者たちに危機感をもたせたのかもしれない。今まで緩みまくっていた気が引き締まり、巨人殺しに長けている調査兵団を頼るようになった、であればこれほど喜ばしいことは無い。
『(別にそこまで気にしていなかったけど。まあ、クソハゲの努力が認められたのだと言うのであれば。これまでの犠牲は無駄ではなかったというわけだ)』
こんなこと本人には言わないけれど。
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