初めまして(1)
name change
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翌日からシグルドと共に調査兵団所属となり、カイの生活は一変した。
他にも調査兵団に入団した同期の仲間がいたが、卒業式のシグルドの一件で距離を置かれてしまい、口をきくことなくそれぞれの班へと別れることになった。
「さて、今日からお前らはもう訓練兵ではない。立派な兵士となる。調査兵団を選んだということはお前らは巨人と戦う意思があるということだな?」
「はい。人類の敵である巨人を滅ぼす為、これまで訓練を受けてきました」
「うむ。良い心構えだ。では、まずはお前らには馬を選んでもらおう」
班長に着いてこいと言われ、大人しくついて行く。馬小屋に居る馬を一匹ずつ見ていき、その中から相性の良さそうな馬を選べと言われ、カイとシグルドは馬の前をウロウロと歩き回る。
「選べって言われてもなぁ……」
『適当に、は流石にまずいだろ。壁外で命を預けるんだから』
とはいえ、選べと突然言われてもすぐには決められない。どの馬も凛々しい顔立ちで、とても頼り甲斐がある。だが、この馬にしたいという感じはない。
『どうすっかな……うん?』
一通り見ていった先にその馬は居た。
仲間たちから少し離れた所でそいつはじっとカイを睨むように見ている。
『班長、この馬は?』
「ああ、そいつか。そいつはよした方がいい」
『なんでですか?』
「子馬の頃から気性が荒くてな。母馬を蹴り飛ばしては良く怪我をさせていたんだ。成長してもそれは変わらずで、背中に人が乗ろうとすると嫌がって振り落としちまう。馬車にしても言うこと聞かねぇから、こいつは近々殺処分予定だ」
『殺処分……ですか』
人の言うことを聞かないから仕方ないと班長は困ったようにその馬を見る。自分の話をしていると気づいたのか、そいつは不機嫌そうに足を地面に叩きつけて威嚇していた。
『その殺処分、一旦保留してもらうことって出来ます?』
「保留?出来なくはねぇが……お前、まさかこいつにするつもりか!?」
『決めたわけじゃないですけど……まあ、仲良くなれたらいいなぁって』
「こいつは無理だって言っただろ。これまで何人の兵士がこいつの蹴りで生死をさまよったと思ってんだ」
『蹴られそうになったら避ければいいってことですよね?よし、頑張ります』
「頑張りますじゃねぇよ!!お前人の話を──」
「班長、無理ですよ。こうなったら誰にも止められませんから」
「はあ?」
カイを引き留めようとする班長にシグルドが苦笑混じりに声をかける。
「カイ、そいつがいいんだろ?」
『んー……何となく、なんだけどな』
こいつとは仲良くなれそうな気がする。なんとなくそう思った。
『そういえばこの馬の名前はなんていうんです?』
「あー……なんだったか。誰かが付けてた気はずなんだが忘れちまったな。皆こいつと関わろうとしねぇから自ずと呼ばれなくなっちまってな」
馬小屋の隅へと追いやられ、名前さえも呼ばれない馬。人間であれば寂しさでどうにかなってしまっていただろう。
『じゃあ、明日までに考えてくるから。新しい名前付けような』
忘れられてしまったのであればまた付けるしかない。こいつが気に入るか分からないからいくつか候補を出さなくては。明日また来た時に名前を呼んでみて、反応が良さそうな名前にすればいい。
『またな、えーっと……馬!』
「カイ、お前馬って……」
『仕方ないだろ。まだ名前考えてないんだから』
次は兵舎の案内だと班長に呼ばれ、シグルドと共に馬小屋を離れる。相変わらずそいつはカイの事を睨むように見ていたが、終始やっていた足鳴らしは収まっていた。
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