葬式(4)
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~Levi~
「飯食ったら寝ろ。明日は外に出るからな」
『リヴァイさんは?』
「俺は部屋に戻る」
ここに来るために忙しく動き回ったのだ。ただでさえ、色々と学ぶことが増えたというのに。
そのせいで疲れが溜まっている。今すぐベッドに横になりたかった。
『戻る……』
掴まれている左手に力がこめられる。まさか、とカイの顔を見るとどんよりとしょげていた。まるで捨てられた子犬のように。
「おい……ガキじゃねぇんだから一人で寝られるだろうが」
『だってリヴァイさん、そばに居るって』
「待て。確かに居てやるとは言ったが四六時中お前のそばには居られねぇよ」
そう言い返すと、カイは押し黙る。
冗談じゃない。寝る時も一緒に居て欲しいなど子供のわがままだ。そんなことまで構ってはいられないと言おうとした時、カイはリヴァイの手をそっと離した。
『ごめんなさい』
その言葉にぴしりとリヴァイは固まる。
なんだこれは。
なんでこうも胸の奥が抉られるんだ。
カイの小さな謝罪がリヴァイの心臓をグサリと刺し貫く。本人もわがままを言ってしまったと分かっているから手を引いたのに。このまま部屋を出てしまえば自室に戻れたのに。
考える間もなく衝動的にリヴァイは引っ込んだカイの手を掴み取っていた。
「休みの間だけだ。それ以上は居てやれないからな」
ああ、言ってしまった。自分の時間を削ってまでカイの元にいるメリットなんてないのに。そんな事をしている暇があるなら兵士長としての責任を全うするための勉学に時間を割けた。
「(クソ……一体なんなんだ)」
カイが嬉しそうに微笑むから。
つい甘やかしてしまう。他の兵士が同じ状態にあってもここまではしないはずだ。何故カイにだけこんなにも緩くなってしまうのか。
──まるで親子じゃないか。
いつだったかハンジにそう言われた。その時はこんなデカイ子供は要らないと返したが、今はどうだ?
「(こいつはガキじゃねぇ。そんなもんじゃない)」
でもその括りが分からない。親が子を見守るといったものじゃない。そもそもリヴァイにはそれが分からないのだから。親が子を思う心情なんて。自分が享受出来なかったことをどう理解しろというのか。
『でも、その……無理してるならいいです。一人で寝れますから』
これはきっと違う。
「気にしなくていい。俺が決めたことだ」
『気をつかってくれるのは嬉しいですけど、わがままだってことは分かってるので。大丈夫、です』
そんな顔で大丈夫だと言われても説得力に欠ける。嬉しそうな顔から一転、申し訳なさそうに顔を伏せるカイにリヴァイはため息を零した。
「俺がお前の傍に居たいから居るだけだ。お前のわがままだかなんだかは関係ない」
親子なんてもんじゃない。
『え……』
「一人が寂しいなんて言って死なれても困るからな」
この感情は絶対に違う。
『あ……はい』
「わかったらとっととそれを食え」
ただ、この感情の名前が分からない。
カイの表情一つ一つに心が揺さぶられる。こんなことこれまで一度だって起きなかった。だからこの感情をなんと名付ければいいのか。どう呼べばいいのかが分からず頭を抱えてしまう。
『リヴァイさん』
「なんだ?まだ何か文句でもあんのか」
『ありがとうございます』
どくりと心臓が強く脈打つ。
振り返った先に見えたカイの笑みに。リヴァイの目は釘付けになった。
「(ああ、俺は)」
頭がバカになってしまったらしい。
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