アデライン(2)
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~Levi~
「走ってこいとは言ったが、そいつを寝かしつけてこいとは言ってねぇよ」
一時間ほど経った頃にアデラインは戻ってきた。とろとろゆっくり歩く姿に走り回りすぎて疲れたのかと思ったが、背中に乗っている人間の様子を見て察した。
「よく落とさずに連れて帰ってきたな」
眠り込んでいるカイは手綱から手を離している。そんな状態で走っていればずり落ちていた事だろう。
カイの意識が無くなったことに気づいて走るのをやめたのか、それとも眠そうにしていたカイを寝かしつけたのか。
どちらにせよ、アデラインがカイのことを気にかけたという証明だ。
戻ってきたアデラインはシグルドに目もくれず真っ直ぐリヴァイの元に歩み寄る。眠ってしまったカイをどうにかしてくれと言わんばかりに、リヴァイに身体を押し付けてきた。
「手のかかる野郎だな」
だらりと垂れ下がっている腕を掴んでアデラインの背中からずり下ろす。そのまま地面に落としてしまおうかと思ったが、寝顔があまりにも穏やかだったので抱えることにした。
「アデライン、中に戻れ。鍵はエルヴィンが持って行った。お前が勝手なことをしなければもう鍵は掛けないそうだ」
自分の馬房の方を一度見てからアデラインはカイの方を振り返る。リヴァイに横抱きされているカイの顔をべろりと舐めてから寝床へと戻って行った。
「上出来だ」
これなら問題ない。それどころか良い関係値を作り上げている。たった一ヶ月でここまで信頼関係が生まれるとは思わなかった。それもこれもカイが毎晩話しかけていたからこそ生まれたものだろう。
どれだけ疲れていてもアデラインの元に出向き、その日あった事をこと細かに喋っていた。話をして頭を撫でるだけでそれ以外のことはしない。
アデラインを救ったのはカイだ。他の誰でもない。
「よくやった」
腕の中でスヤスヤと気持ちよさそうに眠っているカイを労う。起きている間に言おうものなら喜んで騒ぎ散らしていただろう。
「カイを返せ」
「あ?」
「いつまでも抱えてんじゃねぇよ」
リヴァイの腕から横取りするようにシグルドはカイを奪い取る。そんな乱暴な手つきで抱えようものなら起きてしまうだろう。
『ん……ん、』
「こいつに触るな」
シグルドはリヴァイをひと睨みして兵舎へと帰っていく。そんな彼の姿に頭を抱えた。
「クソガキが」
あれのどこがいいんだ。ただのクソ生意気なやつでしかないのに。
カイと話をしていくうちにシグルドに対して友人以上の感情を持っていることに気づいた。本人は自覚しているみたいだが、その想いをシグルドに言う気は無さそうで、聞いているこちらがそわそわしてしまう。
片方だけならまだしも、シグルドの方もカイのことを想っているから面倒なのだ。
純粋にシグルドを好んでいるカイと違い、シグルドはカイに歪んだ愛情を向けている。他者との関わりを制限し独占しようと必死だ。
「めんどくせぇ奴らだな」
アデラインの件で接点が増えたせいか、カイは自分に懐いてしまっている。エルヴィンともそれなりに話をしているみたいだが、リヴァイほどでは無い。
その事が気に食わないのか、シグルドはリヴァイを見かける度に睨むようになった。誰もいなければ悪態をつくほどに。
「馬の問題が無くなったんだ。これで落ち着くだろ」
アデラインがカイを主人と認めたのであれば、リヴァイがアデラインの側に居る理由はない。厩舎に近づかなければ二人と会うこともないだろう。
また平穏な毎日が続く。それだけのこと。
「チッ……関わりを持ちすぎたか」
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