アデライン(2)
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~Levi~
「大丈夫そうだな」
「ああ。あれなら平気だろうよ」
背にカイを乗せたアデラインは厩舎の中をぐるっと一周してから通りの方へと走って行った。乗っかっているカイは緊張と不安からか表情が強ばっていたが、それも少しずつ和らぎ、通りへ出る頃には笑みさえ浮かべていた。
あれならば壁外調査に連れて行けるだろう。
「おいチビ!何行かせてんだよ!」
「てめえ、その呼び方やめろって言ってるだろうが」
カイたちが居なくなった途端、シグルドはリヴァイを睨みながらぶつくさと文句を垂れる。
この男はカイの前では好青年を演じているが、カイが居なくなると印象がガラリと変わる。それが上官であるエルヴィンの前でもだ。
「あの馬がカイを振り落とさない確証があるのか?あのまま逃げ出したらどうするつもりだ」
「逃げねぇよ」
「その自信はどっから来てんだよ。今まで閉じ込められてたやつがそう易々と人間の言うことを聞くとは思えない」
「そんなに心配ならついて行けばよかったじゃねぇか」
アデラインのあの脚力に敵うならだが。
今まで閉じ込められていた馬が解き放たれ、自由に風を切って走り出している。今のアデラインの速力は立体機動に劣らないだろう。
「これでアイツの殺処分は無くなったな」
「そうだな。明日になったら私の方から伝えておこう」
「ああ」
「さて、私は戻るとしよう。リヴァイたちも早めに戻るように」
眠そうな顔でエルヴィンは厩舎をあとにする。その背中が見えなくなった途端、シグルドに胸ぐらを掴まれた。
「いい加減にしろよお前。あの馬ならまだしも、カイに脅すようなこと言いやがって」
「脅しじゃない。事実だ。それに先に言ったのはてめぇの方だろうが」
アデラインの殺処分が保留されていないことはカイに伝えていなかった。もし知ってしまったら焦りが生まれると思ったからだ。現にカイは殺処分がまた有効であると聞いた時、絶望に満ちた表情で俯いていた。
焦燥や不安をアデラインに悟られてはならない。あの馬は人の感情に敏感過ぎるのだ。少しでも違和感を出せば、アデラインはカイを拒否してしまう。薄れつつあった疑心がまた湧き上がり、背中に乗せるどころか近づくことさえ許さなくなる。
そうなったら殺処分まで秒読みだ。
だが、カイは全てを飲み込んでアデラインに向き合った。その結果、彼は無事に乗ることが出来た。アデラインを殺されたくないという想いが恐れや焦りに勝ったのだろう。
「少しは自分の友人を信用したらどうだ。お前はずっと見てたんじゃねぇのか」
「見てたからなんだ?相手は人間じゃない。何を思ってるか分からない動物なんだよ。カイを信用していたって、あいつは信用に値しない」
ああ、アデラインがいつまでもこいつを毛嫌いしている理由がわかった。
たまにしか顔を出さないエルヴィンですら距離を縮めつつあるというのに、シグルドだけは頑なに近寄らせない。その理由がこれだ。
表面上では良い顔してるが、内心ではアデラインを見下している。ただの動物だと馬鹿にしているのだ。
最初に声を掛けられた時にも思ったが、この男はあまりにも裏表が激しすぎる。そしてその違いに気づいていないカイに苛立ちが募った。
「アデラインもお前からの信用なんて要らねぇだろうな」
胸ぐらを掴んでいる腕を握る。グッと力を込めれば、シグルドは痛みに顔を歪めて手を離した。
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