アデライン(2)
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『え?アデラインに、ですか?』
「ああ。一ヶ月あいつに話しかけ続けたんだろう。もういい加減乗る練習をしろ」
昼の訓練後、いつものようにアデラインに会いに来たカイにリヴァイは提案してきた。
この一ヶ月、アデラインの元に行くたびにリヴァイにも会っていた。最初のうちは自分の馬の世話をしていたのだが、時折カイの話に混じるようになり、今では共にアデラインと話している。
確かにアデラインとは仲良くなったと思う。最近は頭を撫でても怒らなくなったし、逆にアデラインの方から擦り寄ってくるようにもなった。でも、背中に乗るとなると話は変わる。
『アデラインが乗せてくれるかどうか』
「やってみなきゃ分からねぇだろう」
「やってみてダメだったらどうするんですか。また一から関係を立て直さなきゃいけなくなりますよ」
乗れと言うリヴァイにシグルドがすかさず待ったをかける。無理に乗ってしまったらアデラインはカイへの信頼を無くすだろう。そうなったらまた時間を掛けて関係を修復しなければならない。それに、アデラインにトラウマを残すようなことはなるべくしたくはなかった。
「アデライン」
リヴァイに呼びかけられてアデラインは返事をするように顔を向ける。
「まだこいつの事が怖いか」
じっと両者は見つめ合う。
「やめてください。カイにもしもの事があったらどうするんですか」
「お前には聞いてない。アデライン、いつまでそこに居続けるつもりだ?お前がカイを乗せられないというなら、こいつは別の馬を選ばざるをえない。そうなったらお前は処分される」
シグルドを黙らせ、リヴァイはアデラインへと一歩近づく。
「いい加減腹を決めろ」
『リヴァイさん、無理に決めさせなくても……』
「こいつに壁の外を見させたいんだろう」
『それは……そうですけど』
ずっと壁の中で過ごしてきたアデラインに外の広さを教えたいと言ったのはカイだ。こんな狭い場所ではなく、大自然の中を自由に駆けれたらどれだけ気持ちがいいか。
「エルヴィンを呼んでくる」
アデラインの柵は鍵が掛かっており、それは分隊長であるエルヴィンが持っている。元々、鍵は別の人間が保管していたらしいが、カイがアデラインを手懐けるだろうと見越してエルヴィンはその者から鍵を預かってくれていた。
いつかカイがアデラインに乗れると信じて。
「カイ、無理に乗ろうとしなくていいからな?壁外調査の時は別の馬に乗ればいい。仲良くなったとはいえ、こいつはまだ他の人間に対して敵対心を持ったままだ」
シグルドの言う通り、アデラインはカイとリヴァイ以外にはまだ態度が軟化していない。いつも一緒に来ているシグルドにでさえ、時折足を鳴らし、耳を後ろに伏せてしまう。
人間だけでなく他の馬に対しても同じなのだ。壁外調査で外を走るとなったら単独では動けない。班の人間や馬と打ち解けられるのかが今後の課題となる。
「根気強くそいつに構ったと思うよ。でも時間が足りなさすぎたんだ。壁外調査にアデラインは連れて行けない。他の馬に変えた方がいい」
アデラインを思うならその方が良いだろう。でも、初めての壁外調査はアデラインと共に行きたかった。諦めきれないカイにシグルドはため息を漏らす。
「頑固だとは常々思ってたよ。それがカイの性格だから仕方ないと。でも今回はダメだ。こいつにはお前の命を預かる資格は無い」
『そんな言い方はないだろ!?今まで嫌なことをされてきたんだから人間に対して恐怖心を抱くのは当たり前だ。むしろこの一ヶ月でここまでよく心を開いてくれたと思ってる。まだ人を乗せられないかもしれない。でも、いつかは……いつかは誰かを乗せてもいいって思ってくれる日が来るかもしれない』
「いつか、じゃ遅いんだよ。班長に言われなかったのか?次の壁外調査までにアデラインがカイを乗せられなければ殺処分されるって」
『え……待てよ……そんなの聞いてない!』
殺処分の予定は延期になったんじゃないのか。どうしてそんな話が出てきているんだ。
「聞いてないのはカイだけだ。俺もあのチビも知ってる」
「おい、誰がチビだ」
「あんたしかいないだろ」
いつの間にかエルヴィンを連れてきたリヴァイが鍵を手にして立っていた。
嘘だと言って欲しいという思いでリヴァイを見たが、スッと目をそらされるだけで否定はされなかった。
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