初めまして(1)
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『え、俺今日からここでやっていけんのかな』
地面にひっくり返った状態で呟く。視界に入っているのは自身を蹴り飛ばした男。
「チッ……」
『(舌打ちされたよ……マジでやっていけんのかなぁ)』
もそりと起き上がり、捻ってしまった首を撫でる。
先のことを考えると首どころか頭も痛くなりそうだ。今日はもう何も考えずに過ごそう。考えるなら今日の夕飯はなんだろうという事だけにして。じゃないとやっていけない気がした。
⋆ ・⋆ ・⋆ ・⋆
「お前、どこの兵団に行くんだ?」
『あー、決めてなかったわ。そっちは?どこに行くのか決めたのか?』
明後日は訓練兵卒業式。そこでどの兵団に行くかを決める。
「まだ決めてないんだよ。もうこの際、お前と一緒のところにしようかと思って」
『は……?いや、行きたいところあるんじゃないのか?お前首席なんだから選び放題だろ』
「それはそうだけど……なんかなぁって」
『なんかってなんだよ……』
呆れてものも言えず、カイは深いため息を零す。その横でシグルドはケラケラと笑っていた。
シグルド・ファーレンハイト。彼は訓練兵団に入ってから出来た友人だ。
座学も立体機動も優秀な成績を残し、性格も良く、誰とでもすぐに打ち解けるという男。こんなだから訓練兵の色んなやつから好意を持たれていて、いつも誰かしらに告白されている。
引く手数多のはずなのに何故か特定の人間を作らないことでも有名だ。訓練兵の間で、シグルドが誰と付き合うかと賭けが行われるほど。
「で?カイはどこにするんだ?」
『俺は選択の余地があまりないんだけど……』
「そんなことないだろ?まあ……上位十位には入れなさそうだけど、それでも駐屯兵団と調査兵団で選べるんだから」
『駐屯兵団か調査兵団か……』
壁の中で仕事をするか、壁の外で仕事をするか。前者であれば長生きできるし、後者は早死にする確率が高い。
普通であれば皆、駐屯兵団を選ぶだろう。誰だって早死にしたくはない。
だが、カイはとある噂を耳にしていたせいで調査兵団に対して興味を持っていた。
『どうすっかなぁ……』
悩んでいるフリをしつつも、頭では調査兵団のことしか考えていない。
調査兵団にとてつもなく強い奴がいる。そいつは赤子の手をひねるように巨人をばったばった倒しているというではないか。
そんな人物が居ると聞かされたら気にならないわけがない。
「カイ、お前行きたいところがあるんだろ」
『え?』
「当ててやろうか」
シグルドは何故か楽しそうな顔。
「調査兵団に行きたいんだろお前」
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