第二十幕
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「おい……てめえ……」
『怒るよりも先に無事に帰還したことを褒めて欲しいくらいなんだけど』
ひっくり返った状態でリヴァイを見る。逆さまの状態なので、リヴァイの表情が少し見にくいが、物凄く怒っている顔をしているということだけは声色から察した。
「なんでガスの噴出を抑えやがった」
『それは自分の左足に聞いたほうがいいんじゃないか?あのまま突っ込んでたら確実に左足壊してたぞ』
足を怪我していることを知らないとでも思ったのか。リヴァイは一瞬驚いた顔をしてから不機嫌そうに舌打ちをした。
「人のことよりてめえの心配をしろ」
『いやあ……確かにアンカー刺さらなかった時はもうこれ終わったわってなったけど……まさか掴んでてくれるとは』
リヴァイの咄嗟の判断で今生きている。もし、ここにリヴァイが来ていなかったらカイは確実に死んでいた。
『リヴァイ』
「なんだ」
『ありがとう』
「ふん……」
荷馬車から馬へとリヴァイは飛び移り、カイも同じようにアデラインに乗ろうと上体を起こす。
『っあ……!』
「は?」
『あ……やべ……』
腰が痛くて起き上がれない。荷馬車に転がり落ちた時にぶつけたらしく、先程よりも酷い痛みになっていた。腰をさすろうと手を当てると、服越しにも分かるほど熱を持っている。
『これは……やばいな』
「怪我してんのか」
『怪我……かなぁ。女型に殴り飛ばされてぶつけたんだよ』
「殴り飛ばされただ?」
『そう──って、え、お前今すっげぇ顔してるけど。なに?なんでそんなキレてんの?』
今まで見たことないくらい眉間に深いシワを作り、親の仇を見るような顔でリヴァイは巨大樹の森を睨んでいた。
「チッ……引きずり出して殺すべきだったか」
『は?なに?なんて?』
「なんでもねぇ。怪我をしてるなら馬には乗るな」
『いやそれじゃ荷馬車の速度が落ちるだろ』
「てめえ一人乗ったくらいじゃ変わらねぇ」
そう言ってリヴァイはアデラインを連れて前へと行ってしまった。
気を遣わなくて大丈夫だと声をかけようとしても、腰の痛みのせいで起き上がれず、一緒に乗っていた兵士に手を借りて寝かせてもらった。
「カイ!!」
『なんだよ……次はミカサかよ……』
こちらへと馬が近づいてきたかと思えば、今度はミカサが顔を出す。確かさっき巨人を倒して兵士を助けていた。
「カイ!心配した!」
『それは悪かった。ちゃんと戻ってきたから。それよりエレンは?』
「エレンはまだ眠ってる」
『無事ならいいよ。エレンに悪いことしちゃったな』
「悪いこと?」
『あー……うん。女型と二人きりにしちゃったからさ。だから巨人化するしかなかっただろう』
「カイもあの巨人の近くにいたの?」
『うん?ああ、まあ』
「まさか取り残されていたのは女型のせい……?」
『そうなる──ってお前もかよ!なんなの!?お前ら!』
少し前のリヴァイ同様、ミカサも顔面に"ぶっ殺してやる"とでも書いてあるのかというほどブチギレている。
「やはりあの巨人は始末するべきだった。次会ったら必ず息の根を止めてみせる」
『もう好きにしてくれ……俺はもう寝る』
マントのフードを深く被り目を閉じる。
『(そういえば……怒られなかったな)』
真っ先に怒られると思っていた。できもしないことを軽々しく言うなと。
でも、リヴァイはカイを見た時、酷く安心した表情をしていた。話していた時も口ではブツブツ文句を並べていたけれど目はとても優しかった。
『(あとで言われんのかな)』
胸がずん、と重くなる。覚悟しておかなくては。何を言われても受け止められるように。
その時が来るまでは休ませてもらおう。
「カイ、お休み」
『お休み、ミカサ』
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