第二十幕
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森を出る直前、巨人に見下げられていた遺体を見つけて回収しアデラインの背に乗せた。外に出てみると、調査兵たちは既に壁へと向かったらしく人っ子一人見当たらない。
『どの道で行ったんだ……これこっちであってんのか?』
適当に走ったら確実に迷う。なるべく来た道を辿って出てきたのだが、森の周辺は景色の変わらない草原で、道なんて分かるはずもなかった。
『どうするよこれ……飛ぶしかないか?高所から見渡せば流石に見つかるだろ』
森入口の木のてっぺんへと飛び上がり周囲を見渡す。カイの居る位置から斜め右方向に巨人が集まっているのが見えた。
『あそこか』
アデラインに指笛で指示を出し、カイもその方向へと飛ぶ。周りに建物や枝の太い木は無い。ここから巨人のところまで行くのに頭を使いそうだ。
『枝が折れる前にアンカー外して……次は……あー、いや本当にリヴァイには感謝だわ』
細い木を伝いながら荷馬車へと近づく。巨人の元まで行けばあとはなんとかなりそうだ。
「くっ……このまま追いつかれる!」
「早くこっちに来い!!」
荷馬車の後ろ。巨人のすぐ足元に誰かが居る。
『何やってんだか……出遅れたのか?』
必死に馬を走らせて巨人から逃げている一人の兵士が見え、カイは苦笑いを浮かべる。
『まさかここで殿の任を果たすとはなぁ』
兵士を追いかけている巨人の項にアンカーを刺して飛び、巨人の肉を切り裂いた。
「あ……」
『早く走れ!捕まるぞ』
「あ、ああ!」
兵士を逃がすために周りの巨人を倒していく。四体ほど倒したところで、こちらを見ている目に気づいた。
目玉が落ちるんじゃないかというほど目を見開き、呆気に取られた表情でカイを見ている。
『見つけた』
やっと合流できた。ほっと胸を撫で下ろしていると、横から巨人がこちらへと走ってきているのが視界に入る。
『もう無理だな……ガスがもたない』
ここまで飛んでくるのにかなりの量を使った。それで巨人まで倒したのだ。追加で現れたやつを相手している余裕は無い。
「カイ!」
不意にリヴァイに呼ばれ、巨人からそちらへと顔を向ける。
「飛べ!!」
『無茶言う……ここから荷馬車までワイヤーが届くかどうか……』
巨人の手を掻い潜って行くのだって大変だというのに。
でも。
『来いって言うなら行くしかないよなぁ』
まずは今足場にしている巨人を倒さなくては。
『乗り心地は最高だったよ。愚直に真っ直ぐ走り続けてくれてありがとうな。お前のおかげでガスを無駄にしなくて済んだ』
乗っかっている頭を撫でるようにこんこんと剣先で叩く。それから背後に回って項を削ぎ、身を翻して荷馬車の方へとアンカーを飛ばす。
これでやっと戻れる。そう安心したのもつかの間。
こんっという音がしたあと、荷馬車にいた兵士とリヴァイの顔に絶望の色。
『やっぱ……そう簡単にはいかないか』
ワイヤーの距離が足りず、アンカーが板に突き刺さらなかった。周囲にはもうアンカーを刺せる場所は無い。そのため、カイの身体はゆっくりと落ちていく。
『仕方ないって。こればっかしは』
横から来ていた巨人がカイを掴もうと手を伸ばしてきている。
避けられない。
お終いだ、そう思って目を閉じようとした瞬間、グンッとワイヤーが引っ張られた。
「引け!カイ!!」
『は……』
荷馬車に飛び乗ったリヴァイが弾かれたアンカーを持っていた。
『ほんとに……頼れる上官だわ』
巨人の手がカイを掴む間際、トリガーを押してワイヤーを巻き取る。
剣を鞘へと戻して荷馬車へと転がりこもうとしたとき、リヴァイが左足を庇っているのが見えた。
このまま引き続けたらリヴァイにぶつかる。どの程度の怪我なのかは分からないが、この勢いでぶつかってしまったら怪我がもっと酷くなるだろう。
『リヴァイ!しゃがめ!!』
「あ!?」
咄嗟にしゃがんだリヴァイの真上をすり抜ける。立体機動装置を腰から外して、カイは荷台へと転がり込んだ。
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