第二十幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『ん……』
頬を誰かに撫でられているような感覚。擽ったいと手で払ったが、相手は懲りることなくカイの頬を撫で続ける。
『なんだよ……あれ、アデライン?』
目を開けると目の前にアデラインがいた。ずっと頬を撫でていたのはアデラインの舌だったらしく、カイが目を覚ましてもべろべろと舐めていた。
『起こしてくれたのか』
顔を撫でてやるとアデラインは舐めるのをやめ、カイの手に擦り寄るように顔をぐりぐりと押し付けてくる。
周囲をぐるりと見てみると、そこは巨大樹の森の中。人も巨人の気配もない。自分とアデラインだけが森にいた。
起き上がろうと地面に手をつき、足に力を入れたところで腰に鋭い痛みを感じて身体から力が抜ける。
『あー……思い出した。女型に殴られて木にぶつかったんだ』
エレンを守ろうとして巨人と戦っていたが、その途中で殴られて吹き飛ばされた。体勢を戻そうとしたが間に合わず、咄嗟にアンカーを飛ばして衝撃を抑えようとしたが、ワイヤーが伸び切る前に背中を木に打ち付けてしまった。
『立体機動は……使えそうだな』
ガスの残量はまだありそうだが剣があと二つ。巨人と鉢合わせたら面倒だ。
『エレンはどうなったんだ……俺が居なくなったからきっと』
巨人化しているはず。エルドたちを殺されてあれだけ憤慨していたのだ。その上でカイまで居なくなったとなれば誰にも止められない。
『アデライン、悪いちょっと屈めるか?』
背中の痛みが酷くて足に力が入らない。アデラインのおしりをポンポンと撫でると、足を折ってカイが乗りやすいように身を低くしてくれた。
『エルドたちの遺体が回収されてるってことは……リヴァイはここを通ったんだな』
女型に襲われた所に残っているのは血痕だけ。遺体は全て回収された後だった。その事から察するに、もうリヴァイたちは巨大樹の森から撤退しているに違いない。
これは完全に置いていかれた。
『探してる暇なんてないもんなぁ。どうにか追いつければいいけれど』
とりあえず今は森から出なくては。外にまだリヴァイ達がいたら合流すればいいし、居なかったら自力で壁の方まで戻らなければならない。
『ガスと刃の残量を考えると微妙だな……まあとりあえず』
今は動くしかない。アデラインを走らせてまずは森の外を目指す。衝撃で腰が痛んだが、奥歯を噛み締めて我慢した。
『……会ったら謝らないと。謝ったくらいで済むとは思えないけど』
守ると言ったのに守れなかった。また優秀な部下を失わせてしまった。
失望されたに違いない。なんでお前だけ生き残ってるんだと責められたら返す言葉もない。そうなったらどうしようか。
それともこのまま帰らずにここで一人暮らした方がいいのではないか。そんな気にまでなってくる。
『んー……まずは言わないと。班にいた義務だし』
仲間の最期を伝える義務がカイにはある。その後、リヴァイの反応を見て決めればいい。
別に悩む必要は無い。どうせ壁内に戻ったって帰る場所なんて兵団くらいにしかないのだから。そこから追い出されたとなったら、どこにふらっと行けばいい。
『自由気ままに、なんて出来ないだろうけど。まあその時はその時で』
.