第二十幕
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壁の方へと馬を走らせている中、後方から赤の煙弾が撃たれる。巨人が近づいてきているという報せだ。
「大きな木も見えなければ建物も見えない。思うように戦えないな」
「壁まで逃げ切る方が早い」
「く……」
壁まで逃げるには速さが足りない。後方にいる荷馬車はあっという間に巨人に追いつかれてしまうだろう。
生きている人間を連れて帰るにはこの方法しかない。
「ダメだ!追いつかれる!」
「俺があいつの後ろに回る!ひとまず気を逸らしてその隙にお前たち──」
近づいてくる巨人を倒そうと剣を抜く兵士にリヴァイは吠えた。
「やめておけ!それより遺体を捨てろ。追いつかれる」
「し……しかし……」
「遺体を持ち帰れなかった連中は過去にもごまんといた。そいつらだけが特別なわけじゃない」
「あ……」
「やるんですか……?ほんとにやるんですか!?」
遺体に縋りついている兵士を見てリヴァイは顔を歪める。左足を負傷していなければ立体機動を使って巨人を倒せた。
こんな選択をしなくて済んだ。だが、今悪態ついたって状況は変わらない。彼らを逃がすためには選ばなくてはならない。
生きている人間か、死んでいる人間かを。
「くっ……やるしかないだろ!」
荷馬車に乗っている兵士は戸板を外して遺体を一つずつ下ろしていく。転がっていく遺体は巨人に踏まれ、蹴られていった。
打ち捨てられていく遺体の中にペトラの姿もあった。彼女も無惨に転がされ消えていく。
せめて遺体だけでも連れて帰れたら。そんな願いも虚しく散っていった。
「お、おい!早く来い!!」
兵士の呼び声の先、馬に乗った兵士が巨人に追われながらついてきていた。
その男は友人の遺体をどうしても連れ帰りたいと言っていた者だ。
「だ、ダメだ……!」
「くそっ!」
あれでは追いつかれる。ディターの背後に忍び寄る巨人の手。もう誰もが無理だと顔を背けたとき、巨人が前のめりに倒れていった。
「な、何が起こったんだ!?」
「分かんねぇ……でも、これでディターが逃げられるぞ!」
ディターの周りを走っていた巨人が倒れていく。そして立体機動の動作音。
「誰だ……」
誰かが巨人を倒しているのは確かだ。だが、その誰かが分からない。
「あ、あのリヴァイ兵長」
「なんだ」
「その馬は……」
「あ?」
リヴァイの左方向を指さす兵士は引き攣った表情。
指の先へと目を向けたリヴァイはこれでもかと目を見開いた。
「アデ……ライン」
リヴァイと並走するようにアデラインが走っている。その背には遺体を乗せて。
「そいつは……」
回収できなかった遺体の一つ。何故それをアデラインが背負っているのか。一体誰がこんな真似を。
そこでリヴァイはハッと後ろを振り返る。
次々に巨人を倒している者の姿が漸く視界に映った。
そいつはリヴァイを視認すると、いつもの笑みを浮かべて──
『見つけた』
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