第二十幕
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「待ってください!まだ一人戻って来てません!」
「ダメだ。もう森に戻ることは許されん」
「まだ……まだ生きてるかもしれないんです!」
騒いでいる声が聞こえ、リヴァイはそちらの方へと顔を向けた。
エレンの友人である女性兵士が必死に他の兵士に訴えている。エレンを救い出したというのに一体何を喚いているというのか。
「おい、どうした」
「リヴァイ兵長!そ、それが……」
「まだ一人戻ってきていません」
「誰だ」
「カイ・クラウンという兵士です」
名前を聞いてどくりと心臓が脈打つ。
「さっきから言ってるだろう!撤退の伝令はもう飛ばしたんだ。それでも森から出てこないのであればそいつは死んでいる」
「ですが!」
「諦めろ」
ぴしゃりと言い放ったリヴァイをミカサはキッと睨む。
「確か貴方の班にいたはず。カイはどうしたんですか」
「生死不明だ。どのみち出てこないということは死んだも同然だろう」
「何故……なんで連れて帰ってきてくれなかったんですか」
「こちらにもやることがある。一人一人の兵士に構っている暇は無い」
「貴方の部下でしょう。部下の命も守れないんですか!」
ミカサの言葉が刃になって胸に深く突き刺さる。
エレンを女型に連れ去られ、その上でカイや他の部下も失った。エレンをなんとか取り戻し、殺された部下の死体も回収出来たというのに。
カイに関しては一切分からない。何度も探しに戻ろうかと振り返ったが、勝手な行動は他の兵士の生存を左右することになる。
それにもし死んでいたとしたら。その事実を受け入れられる気がしない。それならば、このまま生死不明のままでいい。分からないままの方が、まだ精神を保てる。
「あなたには頼らない。私が探しに行く」
「やめろ。お前一人で探し出せると思ってるのか」
「見つけるまで探す」
「それで巨人に襲わちまったら元も子もねぇ」
「うるさい!エレンとカイを守れなかったあなたに言われたくない!」
言い返そうにも言葉が出てこない。守れなかったのは事実だ。
「ああ……そうだな」
ミカサの言葉に肯定すると、ミカサは悔しそうに歯噛みしてリヴァイの前から立ち去った。
「リヴァイ兵長……」
「撤退の準備を進めろ」
「はい」
この場を動くまでもう少し。その間にカイが森から出てきたら……そんな期待が生まれそうになった。期待したところでそうはならない。今よりもっと気分が落ち込むだけだ。
「諦めろ」
ミカサに放った言葉は自分に言い聞かせるためのものでもある。
もうカイは死んでいる。そう諦めてしまった方が楽だ。
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