第三幕
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「カイさんと知り合いなの?」
「うん。子供の頃に」
カイが補給基地へと飛びだってからミカサはアルミンと向き合った。
「私は彼の後を追うけど。アルミンはどうする?」
「ぼ、僕は……」
きっと自分は生きる価値なんて、と思ってるのかもしれない。
アルミンにエレンのことを聞いた時、彼は嗚咽混じりに班の者たちの戦死報告をした。
後衛にいた時に感じた嫌な予感は当たってしまった。
きっと大丈夫。エレンなら大丈夫と思っていたのに。
「アルミン、今は感傷的になっている場合じゃない」
そうだ。今はそんな事をしている暇は無い。ここから撤退して壁を登ることを考えなければ。
「アルミン、立って」
「えっ」
「マルコ、本部に群がる巨人を排除すれば、ガスの補給ができてみんな壁を登れる。違わない?」
「ああ、そうだけど……。でも、いくらお前がいてもあれだけの数は……」
「できる!」
「えっ……」
「私は強い。あなたたちより強い。すごく強い、ので、私はあそこの巨人どもを蹴散らすことが出来る。例えば一人でも」
先にカイが補給基地へと一人で向かった。でも、彼は憲兵団の人間だ。自分たちと同じように訓練兵時代を送ってきた身であっても、内地で仕事をしているカイではあの巨人を倒すことは出来ないだろう。
「(何故カイがここに居たんだろう)」
気楽に話しかけられる関係ではなかったと思い、ミカサは抱いた疑念を本人に聞くことが出来なかった。
カイと話をしたのは少ない。
よく遊んでくれる近所のお兄さん。エレンが何かしでかす度にカイが両親に代わってよく仲裁に入ってくれていた。
ミカサはそんなカイをいつも眺めることしかできなかった。彼は優しく話しかけてくれていたというのに。
さっきもミカサとアルミンのやり取りを聞いて何かを察したのか、悲しそうな表情を浮かべるだけで聞いてくることはしなかった。多分、カイはエレンが戦死した事を悟ったのだと思う。
ミカサを見てホッと胸を撫で下ろしていたのがとても心苦しい。エレンが生きていたら彼はとても喜んだはず。あれだけ可愛がっていたのだから。
エレンではなく、自分が生きていることが。とても……。
謝ったとしてもエレンが帰ってくることは無い。きっとカイもそんなことは望まないだろう。
守りきれなかった者の詫びなんて受け取ったってなんら嬉しくない。謝るくらいなら最後まで守り抜けと言われてもおかしくないのだから。
「なんて、言えばいいんだろう」
悟ってはいるだろうけど、ちゃんと言葉にして言わなければならない。それはエレンの家族として果たさなければならない務めだ。
落ち着いた時にでも話そう。きっと責め立てられるかもしれない。それでも。
「私は……貴方を守れなかったから」
これはエレンを守れなかった罪だ。逃げずに向か合わなくては。
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