第十九幕
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「なんだよ……今の」
森を揺るがすほどの大絶叫。誰に聞かなくてもわかる。あれは先程捕まえた巨人の咆哮だと。
『(無事に引きずり出せたのか、それとも……)』
警戒はしておくべきだ。リヴァイから作戦成功の言葉を聞くまでは気を抜かない方がいい。
「どうやら終わったようだ」
撤退の印として煙弾が空に撃たれる。それを見てホッとしているエルドたちの横でカイだけは睨むように煙弾を眺めた。
「カイ、どうしたんだよ」
『エレン、気を抜くな。リヴァイと合流するまでは周囲を警戒していろ』
「もう終わったんだろ?それなら……」
『備えといて悪いことは無い。な?』
素直に頷いたエレンに笑いかけ、撤退の準備を始める。
カイの横でオルオとペトラがエレンと何やら話しているのが聞こえ、思わず口元が緩んだ。
「まったく。大先輩が居るってのに呑気な奴らだ」
『大先輩?』
「カイは大先輩だろう。俺たちより先に調査兵団に入ってるんだから」
エルドにそう敬われるが、カイはゆるゆると首を横に振って否定。
『調査兵団に居たのは三年くらいなもんだよ。エルドたちのほうが先輩だ』
「いいや。カイは先輩だ。立体機動をあんなに使いこなすなんて俺達には出来ねぇよ。流石は鳥」
『その"鳥"ってのやめないか?あんなのを鳥なんて呼んでたら本物の鳥が泣くぞ?』
ちょこまかと動き回る鳥がこの世にいるのか。地面を跳ねるように歩いている鳥は見たことはあるが、翼を広げてあんな細かく動き回るのは鳥では見たことがない。自分の飛び方を何かに例えるとしたら小バエの方がピンと来る。
「自由の翼がよく似合ってる。マントがはためく姿は鳥そのものだったんだ。お前は俺たちの希望だ。空高く舞う自由な鳥」
『そんな立派なもんじゃない』
それにこの飛び方は教えられたものだ。カイが自分で生み出したわけじゃない。
彼が生きていたら"鳥"の名前はそいつのものになっていたはずだ。
『シグルド……』
もう二度と飛ぶ姿を見れない。自分のせいで彼の翼は失われてしまったから。
「カイ、行くぞ」
『……わかった』
落ちそうになった気分を戻すように深呼吸をする。考えるのはやめよう。一度泥濘にハマったら戻れなくなってしまう。
『よし……!』
飛んでいくエルドたちの後を追う。
この先、どれだけの地獄が待ち構えているのかも知らずに。
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