第十八幕
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「動きは止まったようだな」
「まだ油断は出来ない。しかし、よくこのポイントまで誘導してくれた」
エルヴィンの元へと降り立つと、いくつものワイヤーに拘束された巨人が項を庇っている状態で立っているのが見えた。
「後列の班が命を賭して戦ってくれたおかげだ。彼らがいなければカイ一人で時間を稼ぐのは無理だった」
「そうか」
「そうだ」
やれといったらカイは一人でも巨人の相手をしていただろう。あれは何かとエレンのことを気遣っている。どれだけ注意してもやめなかったくらいに。
「カイは無事か」
「ああ。何ともない。班のものたちと共にエレンを隠すように指示した」
「こちらに来させても良かったんじゃないか?」
「必要ない。あいつは向こうに居るべきだ」
班の人間たちを任せたいという思いもあるが、それ以上に巨人の側に居させたくない。
「ふむ……お前の過保護は筋金入りだな」
「どういう意味だ」
「ハンジが言っていた。リヴァイはカイのこととなると見境がないと。確かに今までそうだったからな」
「別にそういうわけじゃない」
「そうだろう?調査兵団に戻るように言ったのはお前だ。それなのに巨人の近くに居させたくないは矛盾している。今回、自分の班に入れたのも目の届く場所に置きたかったからじゃないのか?」
「違う。あいつはエレンを必ず守り通す。エレンが死ぬようなことがあれば、ウォール・マリアは奪還できねぇ。そうなれば人類は行き場が無くなる」
その為にカイを班に入れた。手元に置いておきたかったわけではない。
そう自分に言い聞かせた。
「頑固だな」
「何がだ」
「認めてしまえば良いものを。心配なんだろう?カイのことが」
なんでこの男は自分の気持ちには鈍感なのに他人の心を読むのは上手いんだ。団長として色んな人間と関わってきたせいか他者の感情に敏感になってしまっている。
「無駄なことを言ってないでさっさとやるぞ。こいつのうなじに居るヤツには色々と聞きてぇことがある」
カイにも頼まれていることだ。中の人間に聞いてくれと。
鞘から刃を出して構える。
──気をつけろよ?
縋るようにマントを握られたのを思い出す。
これだけ拘束されているのだからこの巨人は何も出来ない。それはカイも知っていること。
「エルヴィン」
「どうした?」
「予備の拘束兵器も使え」
「ああ、そうするつもりだ」
「気をつけろ。ここで逃がしたら作戦は失敗だ」
「今日はやたらと念を入れるじゃないか。カイに何か言われたのか?」
「"気をつけろ"だとよ」
「そうか。ならそうするべきだ」
カイの嫌な予感は当たる。
「(何事もなく終わればいいが)」
追加の拘束弾を撃っているのを尻目にリヴァイは班が行った方向に顔を向ける。
森の中であれば立体機動装置が使える。そしてこれまでいくつもの死線をくぐり抜けてきた熟練の兵士。その中に居させれば、少なくとも死ぬことは無いはず。
中の人間を早く出して班に戻る。
隣にいたらいたで騒がしいのに、いなければいないで違和感。
「おいおい……こんなこと慣れたことだろうが」
カイがいない三年を過ごしていたはずなのに。
経った数分離れたくらいで。
こんなにも心配になるのはどうしてなんだ。
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